【完全マニュアル】新卒・中途採用の採用コスト・費用を解説

予算が限られている中で、優秀な人材を採用するのが人事の仕事となります。ですが、最新の採用時の発生費用やその相場を把握していないと効率的な採用手段を見つけることは非常に困難となります。今回の記事では、採用市場の現在を解説し、新卒・中途採用におけるコスト、費用削減のコツをご紹介します。また、新卒・中途採用における発生費用の違いと内訳についてもご説明します。

新卒・中途採用市場の現在

従業員規模数が300人未満の企業における新卒採用倍率はこの数年で増加傾向にあり、2018年度卒の求人倍率は6.45倍と2010年以来の倍率になったとリクルートの大学求人倍率調査において発表されました。一時期の就職氷河期から考えると、新卒・中途採用ともに雇用に関しては年々需要が増しており、売り手市場となりつつあるのが現状で、下記の調査結果を見ても2016年卒の学生と比べて2017年は前年と同程度の厳しさだった、もしくは就職活動が楽だったと感じた学生の割合が高まっています。

新卒採用の難易度調査結果

企業としては、人材採用において選択肢が増加したことでより優秀な人材の流入・確保が出来るようになったメリットがあるものの、実際に人材を確保しても育成にかかる人的リソースやコストは決して軽視できるものではありません。また、経営のベースが整い人材育成に関するマニュアルやフローなどが充実している企業であれば人的リソースやそれにかかるコストはある程度概算・把握できていますが、ベンチャー企業やスタートアップなどインフラが整っていない企業においては人材育成におけるマニュアルやフローなどが不十分であることから人材育成担当者のリソースや人材採用のコストが算出できていない企業もまだまだ多いと感じます。

ここからは売り手市場となってきつつある新卒・中途採用に関する採用コストを比較することで、人材育成にどの程度の費用(コスト)がかかるのか、また採用コストを削減するためのコツやより効率的に人材採用を行う方法をご紹介していきます。

新卒・中途採用におけるコスト、費用削減のコツをご紹介

1.採用コストの定義と計算方法

人材を採用する場合にかかる費用として最も代表的なものが「採用コスト」です。採用コストとは、人材1人を採用するのにかかった経費のことで、大きく分けて「外部コスト」と「内部コスト」に大別し、それぞれのコストを算出します。
「外部コスト」とは、新卒採用であれば求人サイトへ求人情報の掲載や新卒者用のセミナーや会社説明会の開催。それに関わる会場などにかかる費用や採用にインセンティブをかけている場合は1採用のインセンティブ等です。
「内部コスト」とは、セミナーなどの資料作成や採用者の選定・連絡などの人的リソースのことで、「外部コスト」と「内部コスト」を合わせて「採用コスト」と考えられています。

採用コストの計算方法は、上記のような採用にかかった外部コスト・内部コストを項目別にリストアップ・算出し、その総経費から採用人数で割ると1人あたりの採用コストを計算することが出来ます。
下記の図はあくまで参考としてざっくりと外部コストと内部コストについて分類した表で、これまでにご説明した内容を解りやすくするためそのまま表に起こしたものです。

■外部コスト、内部コストの例(イメージ図)

採用コストに関する概算図イメージ

オレンジ=外部コスト,青=内部コスト

上記から採用コストを計算すると、外部コスト(360,000円)+内部コスト(22,000円)=382,000円。 382,000円÷採用人数(1人採用だったとして)=1人あたりの採用コストはそのまま382,000円となります。
実際に人材採用を行った場合はもっと多くの項目でより多くのコストが必要になります。また、中途採用においては業種によって採用までにかかる採用コストは増減があり、コストの項目も新卒採用とは異なるため注意が必要です。新卒採用と中途採用のコストの違いについては後ほどご紹介しています。

表を見ると外部コストに関しては簡単にリスト化でき、どの会場を何時間抑えたからいくら、と単純ですが。内部コストはどの項目で人的リソースが何時間必要だったのかを把握することが重要な課題と言えるでしょう。
採用者の選定から採用連絡までのタスク単位での所要時間を把握し、その担当者1人あたりのリソースにかかる1時間あたりの工数・コストが解っていることがベストです。
また、求人コンサルタントを利用して人材採用の窓口を拡げるとともに、より優秀な人材を受け入れようとしている企業も最近は増えてきた印象です。そうした求人コンサルタントを利用した場合のコストは外部コストに入ります。

実際に発表されている新卒採用した場合の採用コスト平均額は1人あたり約50~60万円と言われており、その大半は広告費であると言われています。実際に求人広告を出稿した場合の1件あたりのクリック単価は1,000円以上になることが普通であり、どの企業も人材採用に力を入れていることがよく分かります。

2.採用コストを節約するコツとは

さて、先の項目で採用コストには大きく外部コストと内部コストの2種類があるとご紹介しましたが、今度は採用コストを節約するコツをご紹介します。

A.採用コスト節約方法 ソーシャルリクルーティング

先にもご紹介しましたが、人材採用の一環で求人広告を出稿した場合の1クリックあたりのコストは1,000円以上が相場で、検索結果の上位に表示させようとすると数千円必要なことがザラにある求人広告の世界。採用コストを削減・節約できるのであれば少しでもしたいというのが企業の本音でしょう。

広告を出稿した場合の費用感から最近では自社でFacebookやInstagramなど求人採用をしている企業もあります。事例でいうとサイバーエージェントでは、Facebookを利用している=IT関連の媒体に対してアンテナを張っている人材ではないかと考えて実施されたようです。
業種に合う合わないはもちろんありますが、こうした無料で出来る方法を取ることで求人にかかる広告費を大幅に削減できるということも1つの手です。

また企業のホームページにも必ず採用情報を載せておきましょう。ホームページは24時間働いてくれる会社の窓口ですので、採用情報を載せないということはよほどの理由がない限り非常に勿体無いことです。

B.採用コスト節約方法 普段から交流会や勉強会を開催しておく

これは大規模なリクルートを目的としたセミナーということではなく、平日や週末の19時から会社の余った会議室で開く数十人規模の小さな勉強会のことです。例えばWeb企業やマーケティング企業など独自のノウハウがあり、アンテナを張った意識が高い同職業の人材が多い業種では、週末の夜などに交流会も兼ねた勉強会を行っており、勉強会の途中でPRタイムを設けたりスライドに情報を入れ込んだりしてこうした人材を募集している、といったPRを行うことが多い印象です。
またこうした距離感の近い勉強会で集まった人材は他社の人材ながらも専門的な分野で働く第一線の即戦力と成り得る人材であるため、直接アプローチできる強みがあることや、そうした人材との知見の共有により社内のノウハウがブラッシュアップされるということも勉強会を開くことのメリットになり、多角的な面からみて効率が良いと言えます。

C.採用コスト節約方法 退職を防ぐための事前ヒアリング

苦労してコストを削減し、ようやく採用した人材がたった1週間で辞めてしまった。という経験はどの企業の採用ご担当者様にもあるのではないでしょうか。こうした場合、退職した理由、離職率が高い理由を明確にするように心掛けましょう。

こうした採用後の離職は企業が求めている人物像・スキル・条件などがマッチしていなかった(擦り合わせが不十分だった)というケースが多いように感じます。
せっかく採用した人材が数日で辞めてしまっては、それまでにかけた時間もコストも労力も全てが水の泡ですので、退職を防ぐための事前ヒアリングに重点を置き、企業の労働条件や必要なスキル、職場の雰囲気や求めている人物像からキャリアパスまでしっかりと擦り合わせて認識にズレがないようにしたうえで入社してもらうことが重要です。

また、ベンチャー企業にありがちなのが入社後の人材育成マニュアルやナレッジが整っていなかったり、不十分な)とによる「丸投げ環境」が常態化していることです。仕事は与えられるものではありませんが、だからと言って入社早々に丸投げして良いというものでもありませんし、せっかく入社してくれた人材にも大変失礼なことです。社内の育成環境が十分ではないことを当たり前とせず、十分であることを当たり前とすることが出来るように企業側も精進しなければならないことを心掛けておきましょう。

新卒・中途採用におけるコストの違い、内訳についてご紹介

先の項目で少し触れていましたが、新卒採用と中途採用における採用コストの違いをご紹介します。

1.新卒採用における採用コストとその内訳についてご紹介

まず新卒採用においてコストとなる項目は、前述の会社説明会に関わる場所取り、資料の準備、新卒者を集めるための学校への訪問活動などが採用前にかかる主な費用となります。下記は内定者へ企業が行っているフォロー項目をリスト化したもので、コストとなり得る項目が解りやすく掲載されています。中途採用者と異なる点はこのような部分がポイントでしょう。また、内定式や社内見学・インターンシップなども新卒者のみにかかる費用です(下記図を参照)。

新卒採用において実施している内定者フォロー

内定者フォローの項目だけをみても、採用コストの計算式をご紹介した際に使った表がかなりざっくりとした内容であったことが解るほど、実際の採用コストに関する項目は多岐に渡ります。
最近では新卒採用の一環でインターンシップを導入し、一度社内の雰囲気や仕事を体験してもらうことでどのような業務内容か理解を深めることや、職場の空気に馴染めるのかという人間関係の確認を済ませてから採用を決定する企業も多くなっています。
企業からすれば離職率を少しでも下げ、採用コストを削減・回収出来るようになり、学生からすれば社内環境や実業務を味わいながら実際に働いている人からの意見が聞けるため貴重な社会経験・情報収集の機会となります。
特に学生が社会人から情報収集出来る機会は限られているため、生の声を聞けるインターンシップはどちらにとっても導入するメリットはあると考えられます。

2.中途採用における採用コストとその内訳についてご紹介

先に新卒採用の採用コストをご紹介しましたが一方、中途採用における採用コストはどのような項目になるのでしょうか。

中途採用は2014年頃から売り手市場となってきたと言われており、ここ数年で様々な採用方法が模索されている状況です。
中途採用の場合、企業に属していながら転職を検討している人材や、仕事を辞めて休職中の人材までニーズも状況も人それぞれになります。その中からいかに社風に合った優秀な人材の興味関心を引き雇用に繋げることができるかが重要なポイントとなってくるため、「求人広告」や「人材紹介」が主だった人材探しの窓口になることが新卒の採用コストと大きく異なるポイントです。

例えば検索連動型広告を利用して求人を行った場合、「求人 東京」などのエリア名で自然検索を行ったユーザーの検索キーワードを基に広告を出す・出さないを決定します。
また、広告が表示されるように設定したキーワード(「求人 東京」)による検索数が最大母数となるため、限られた期間・限られたエリア内で更に限られた数であるユーザーにアプローチすることから、求人広告を行うと大抵が枠の奪い合いになり非常に採用コストがかかります。

上記のような広告の仕組みを理解したマーケティング担当者が社内にいるのであればコストは抑えることができますが、もし居ない場合は求人広告を打ってもらえる代理店を利用することになるため採用コストになります。
実際に業種別で求人広告にかかった費用が増えたかどうかの調査結果が以下の図で、流通・小売業界の求人広告費が前年よりも大きく増加したことが良く分かる結果となっています。

2014年度版 業種別でみた求人広告費の実績

図のように人材が枯渇した業種は新規人材の刈り取りに力を入れるため、先ほどご説明したように「限られた枠の奪い合い」が加熱することがありこのように求人広告費が跳ね上がっていきます。
上記は2014年の中途採用における求人広告費の実績ですが、1年間の平均で353万円もの金額をかけて求人が行われており人材紹介においては更にコスト増の382万円という結果になっていました。

参考URL:http://news.mynavi.jp/series/tensyoku2014/001/

人材が集まりやすい人気の業種であれば求人広告に使うコストは抑えることができますが、人材が枯渇している業種は注意したいポイントです。

新卒・中途採用における費用・コストについてのまとめ

最後に、新卒・中途採用におけるコストについてまとめておきます。

人材採用において必要となる採用コストには大きく分けて外部コストと内部コストがありましたが、新卒・中途採用でその項目は大きく異なってくることがポイントでした。
また、せっかくコストを使って人材を確保したとしてもすぐに辞められるとかかったコストが水の泡になります。そのため、社内のインフラ整備が重要になり、雇用した優秀な人材をいかに辞めさせずに育てることができるかが重要になります。

新卒・中途採用を人材コンサルタントに任せる

より効率的に採用コストを抑えつつ、採用後のリスクを回避する方法として「人材コンサルタントを利用する」のは1つの手段として考えられます。なぜ利用をオススメするのかというと、中途採用の場合が特に顕著ですが、高い求人広告費をかけてようやく集めた人材が自社に適した人材かどうかの保証はなく、スキル等の適正を見ることもできず面談で初めて人と成りを確かめるまでどんな人材を拾えたのか見えないことが最大のデメリットです。また、求人サイトなどを利用しても応募者の人物像が見えるのは実際に面談した時で、会う前にその人物の人と成りを確認することは難しいでしょう。

高い広告費用をかけて精度が異なる人材を呼び込むことは効率的とは呼べないものです。その広告費にかける予定だった費用を人材コンサルタントに回すことでより効率的に自社企業に適した、スキルの高い人材を自社に集めることが可能ですし、社内の採用担当者のリソース確保にも繋がるため余剰時間で別の仕事を任せることも可能になり効率的です。

現在では人材コンサル会社も専門が多岐に分かれており、例えばIT職の中でもエンジニア人材の情報・知見が多い企業であったり、営業職に特化している企業であったりと業種に特化した人材コンサル会社もあり自社企業の目的にマッチした人材に特化したコンサル企業は必ず見つかりますので、探して検討してみるのも良いでしょう。

以上、今回は新卒・中途採用における採用コストの違いから採用コストの節約方法。また、効率的に人材を引き込むための人材コンサルタントの利用についてご紹介しました。

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