商品戦略のプロセス解説step1:「業界・競合調査」

商品戦略のプロセスは「業界・競合調査」「顧客分析」「コンセプト設計」「顧客の声(VOC)を分析」の4つのステップが必要となります。今回は、第1ステップとなる「業界・競合調査」について解説していきます。

業界・競合調査を行うメリット

・参入障壁を明確にしてリスクを計れる
・自社の製品・サービスの優位性を保ち、安定した売上を伸ばせる
・競合他社とターゲットが被って自社の競争力が弱まることを避ける

事前に業界調査、競合分析を行うことで以上のようなメリットが得られます。分析により余分な失敗を減らし、収益や競争力を強めていけるので商品戦略のプロセスとして欠かせないステップです。「業界・競合調査」はこうした収益拡大までの戦略プロセスを目的として行っていくことになります。

 

競合分析の基本

最初のプロセスである競合/業界構造を把握するための、競合分析の基本は次の3つの項目です。

1.競合がターゲットとする顧客層

限られた市場の中では同じターゲットを狙う事が多くなります。競合相手がどのような顧客層をターゲットとしているか把握しておきます。

2.競合の提供する製品・サービス

競合他社の製品やサービスを調査し、自社製品の品質の優位性や差別化を検討します。

 3.競合他社の方針

競合の販売する製品・サービスがどのような方針や経営理念に基づいて作られているか調査します。経営理念はブランドコンセプトとも結びついていますので相手の強みを把握するために必要な調査です。

それでは実際にどのように分析していけばよいのかフレームワークを用いた手法を次章で詳しく説明します。フレームワークにより市場の状況、競合の与える影響などを客観的に分析でき、競争の優位性を持つための状況判断や意思決定のための戦略の方向性を定めることができます。

 

5フォース分析

業界・競合調査に役立つフレームワークとして、「5フォース分析」をご紹介します。5フォース分析とは、競争戦略の第一人者、マイケル・ポーターが提唱し、その業界の競合関係(脅威)を5つの要素から分析する手法です。

画像引用:http://keiei-algorithm.com/wp-content/uploads/2014/08/852d6537baffd57914eea95fe24d8c7a.jpg

 

競合関係の5つの要素

1.既存競合

2.新規参入の脅威

3.代替品の脅威

4.買い手の交渉力

5.売り手の支配力

 「既存競合」の要素では既存競合の自社に与える影響度合いを調べます。同業者が多数いたり、製品の差別化が難しかったり、設備投資の額が多大だったりする程、業界内の競争状態が激しいと言えます。

「新規参入の脅威」は新たな競合相手の増加が与える影響の分析です。新規参入しやすい業界は激しい価格競争が生まれ、収益性・利益率の低下を招きやすくなります。ブランドイメージが高く顧客の忠誠度が高い場合や流通チャネルの確保が難しい場合などは新規の参入障壁も高くなります。

 「代替品の脅威」は自社の製品と同じ機能や性能を持ち、より費用が安い代替品があるかを調査します。代替品により高収益の市場も競争力の低下を招き業界からの撤退も起こり得ます。

 「買い手の交渉力」は顧客との力関係において買い手の力の強さが自社に与える影響を見ます。需給バランスで見た時に供給過多になっていたり、代替品が出ていたり、買い手が強大な購買力を持っていたりなどの場合は買い手側の力が強く、値引きを要求されるなど大きな収益をあげるのが難しくなります。

 「売り手の支配力」は売り手が自社に与える影響力の度合いを分析します。業界を少数企業により寡占している場合、つまり需給バランスを見たとき、需要が旺盛な場合は売り手の力が強いと言えます。他にも特許によって権利を保護された製品や独自の技術を使った製品を提供する場合、供給製品の独自性が強く他社製品と差別化されている場合なども売り手の交渉力が強くなります。

これら5つの脅威を分析することで、業界構造を知り、競争の優位性を構築するアクションに移ることができます。

 

アドバンテージ・マトリックス

競合/業界構造を把握した次のプロセスとして競争の優位性を構築していきますが、競争優位性を構築するためには、自社が属する業界がどのような事業のタイプなのかを知っておく必要があります。「アドバンテージ・マトリックス」は、「業界の競争要因の数」と「優位性構築の可能性」によって事業のタイプを4つに分けて分析するフレームワークです。

特化型事業

特徴:

・業界の競争要因の数が多く優位性構築の可能性が高い事業
・規模に関わらず儲かる可能性がある
・差別化や集中化をはかり独自性を構築していくことで儲かる

規模型事業

特徴:

・競争上の戦略変数が少なく優位性構築の可能性が高い事業
・マーケティング、生産性、開発等の規模が大きいほど儲かる
・シェア拡大によって大きな利益を得る

分散型事業

特徴:

・業界の競争要因の数が多く優位性構築の可能性が低い事業
・大規模になると収益性の維持が難しい
・小売店、飲食店舗、アパレルなどの小規模事業路線

手詰り型事業

特徴:

・業界の競争要因の数が少なく優位性構築の可能性も低い事業
・規模に関わらず収益が出にくい

特化型事業や規模型事業など優位性構築の可能性の高い事業=儲かる事業となります。分散型事業に属する企業はより安定した収益を確保するためには、規模型事業への変換をはかるなどへの方向転換も必要となります。このマトリックスで自社が手詰り型事業に属す場合は撤退やM&Aでの売却も視野にいれます。

競争要因への対処

5フォース分析を提唱したマイケル・ポーターは競争戦略を「業界内で防衛可能な地位をつくり、この5フォースの要因にうまく対処して企業の投資収益を大きくするアクション」と定義しています。この中で脅威となる競争要因に対処するには次の3つの基本戦略が必要と説明しています。

1.コストリーダーシップ戦略(価格戦略)
2.差別化戦略(付加価値戦略)
3.集中戦略(コスト集中戦略/差別化集中戦略)

1は価格面で他社より低い価格を打ち出して優位性をもち、2では製品の性能やサービスの質などで他社とは異なる価値を高めて優位性を持つ戦略です。そして3つ目の集中戦略は特定の市場とターゲットに対しての価格戦略、差別化戦略をしくことです。

重要なのはいずれかの戦略において他社より優位に立つことで、競争に打ち勝ち収益をあげていくということです。自社の強みは何なのか、他社の追随を許さない差別化は何か、そのために必要だったのが競合/業界調査や分析だったのです。戦略をしくときに注意することは、例えばコストリーダーシップ戦略では価格競争で値下げをして価格面で勝つということではなく、コストを下げても収益を生みだせる仕組みを構築することです。差別化も経営戦略ではよく聞くキーワードですが、顧客にとって魅力的な部分で差別化をはかれなければなりません。マーケティングプロセスや営業面で経験が乏しいとなかなか的確な戦略を持つことは難しいといえます。

最後に

戦略の優位性を保ちながら収益を確保することは非常に高度な経営戦略と言わざるを得ません。社内で最初の競合分析から事業タイプの把握、取るべき競合脅威への対処と優位性の確立、収益化までの戦略を担えるノウハウや経験はあるでしょうか?

またアドバンテージ・マトリックスで分析したように事業モデルでの優位性を保ち、収益を安定させるには事業タイプそのものの戦略転換も必要になってきます。そのような転換もまた専門的知識が必要となってきますので、専門家に相談してみることも考えてみるといいでしょう。

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