会社運営にあたって、様々な業務のアウトソーシングが進んでいます。経理・会計業務のアウトソーシングやITのアウトソーシング、人事労務手続きのアウトソーシングなどはもう殆ど当たり前の時代になっていますが、営業もアウトソーシング出来るのをご存知でしょうか。今回は、営業のアウトソーシングである営業代行サービスと、そのメリット・デメリットをご紹介します。特に新規事業立ち上げにおいて、営業パーソンを社員として採用するか、営業をアウトソーシングするかの検討にお役立て下さい。
目次
営業代行とは
営業代行という概念自体は、新しいものではありません。日本では従来、製造業は質の高い製品を製造することに注力して販売は「商社」に任せることで、国内外での市場を獲得してきました。
アウトソーシング型の営業代行とは、営業プロセスにに関する業務を代行して行うサービスです。営業活動は大きく分けると、①商機を探したり機会を創出する部分と、②顧客との交渉からクロージングを含む部分、③既存顧客のアフターケアの部分があります。このいずれか又は全てを代行してくれるのが営業代行サービスで、具体的には以下のような業務代行が提供されています。①や③だけ委託して、最も重要な②の部分は自社で行う場合もありますし、全て任せる場合もあります。
① 機会の創出
市場調査代行からターゲットとなる顧客のリストアップ、電話によるアポイント獲得などがあります。
ターゲット客に電話をして商品やサービスを紹介し、自社の営業パーソンが訪問するためのアポイントをとったり、リストアップした優良企業のキーパーソンを特定し、アポイントを取得したりなどの業務を担当します。
WEBによるプロモーションや、ポスティングによる集客代行サービスなどもあります。
② 顧客との交渉とクロージング
ターゲットとなる顧客と商談し、受注につなげる業務を行います。この部分は自社の営業パーソンが行う場合でも、プレゼンや交渉のスキルがあるスタッフを同行派遣するサービスもあります。
③ 既存顧客のアフターフォロー
インサイドセールス的に、既存顧客のアフターフォローを請け負います。
また上記の他に、営業戦略の立案から検証までのPDCAサイクルをフォローするセールスソリューションのサービスや、既存の営業部隊への教育と検証サービスを提供している代行会社もあります
営業代行の報酬
営業代行会社に対する報酬には、固定報酬型と成果報酬型とあります。
固定報酬型は契約したサービスを一定の料金で行うもので、成果報酬型は、アポ取得件数や成約件数などの成果に応じて一件あたり幾らで報酬を払うものです。できれば「売ってなんぼ」として欲しいところですが、営業プロセスの中には、顧客の開拓など、売上げに直結はしないけれども売上げにつなげるために重要なプロセスがあります。この部分を代行してしてもらう場合は、そのプロセスを行うことによってどれだけの売上げが期待できるかを検討して、妥当な固定報酬を設定する必要があります。
営業代行を利用するメリット
コストが削減できる
営業代行に限らず、アウトソーシングの最大のメリットはコスト削減です。営業代行の場合は、営業に関わる業務を正社員に対する固定費ではなく、変動費とすることが出来ます。また自社の営業社員を使う場合と比較して、以下のコストが節約できます。
- 営業パーソンの採用にかかるコスト
- 正社員としての営業パーソンの労務管理コスト
時間が節約できる
営業代行を利用することで、以下の時間が節約できます。特にスピーディーなアクションが要求される新規事業立ち上げや新製品リリースの際には、新規営業パーソンの確保や教育に時間はかけられませんから、有効な手段となります。
- 採用にかける時間
営業パーソンの採用にあたっては、募集から応募待ち、採用試験、面接など時間がかかります。またせっかく採用した営業パーソンがうまく機能せず、同じ時間をかけて採用しなおしという事態も発生します。営業代行を利用すれば、使える営業パーソンをすぐに提供してもらえます。
- 育成や教育にかける時間
時間をかけて採用した社員には、既に営業のスキルがあって即戦力となる場合もありますが、そのような営業パーソンを一度に沢山採用するのは困難です。多くの営業パーソンを必要とする場合は、採用した社員に営業のスキルを教育する必要がありますが、営業代行会社を利用すれば高いスキルを有する人材が必要なだけすぐに提供されます。
営業のプロを活用できる
営業代行で提供される営業パーソンは、スキルの高い営業のプロです。また通常営業代行会社は様々な業種の営業を代行していますから、違う業界の違った視点でマーケティングや営業方法に関するアドバイスを受けることも出来ます。
また、営業をアウトソーシングすると、自社で育成した優秀な営業マンが他社に引き抜かれるという心配がなくなることも、メリットとなるでしょう。
営業代行のデメリット
専門知識を必要とする業種は不向き
営業活動に高度な専門知識や技術的な知識を必要とする場合は、営業代行会社にそれを説明することに時間がかかってしまいます。また外部に漏れてはならない情報を知った上で営業をする必要がある場合は、最初から自社の社員を教育した方が良いでしょう。
自社社員のモチベーション低下
自社に既に営業パーソンがいる場合に追加や補助として営業代行を使うと、自社の営業パーソンのモチベーションが下がってしまうこともあります。自社の営業パーソンの営業力やモチベーションの問題であれば、高い成功報酬型のサービス料を払うよりも、社員に対する成功報酬額を増やした方が良い場合もあります。
営業活動の管理が直接出来ない
営業代行は委託業務であり、営業パーソンの派遣ではありませんから、委託した活動は自社のオフィスではなく、代行会社で行われます。従ってどのような活動をどのように行っているかの管理は出来ません。
情報流出のリスク
いくら守秘契約を締結しても、営業活動に必要な自社の情報が100%守られるとは限りませんから、外部の人間を使うにはそれなりのリスクがあります。但しこのリスクは、自社の社員がライバル会社に引き抜かれて情報が流出することもありますから、営業代行会社を使う場合に限られたリスクではないといえます。
営業代行会社を比較する際のポイントと注意点
サービス対象地域
販路のターゲットを全国レベルとするのか地方限定とするのか、また海外市場もターゲットとするのかにより、営業代行会社の拠点が全国にあるか、海外にも対応できるのかもポイントに選びましょう。
代行スタッフのステータス
営業代行会社の営業スタッフはその会社の正社員なのか、必要や目的に応じて最適の独立型営業パーソンを調達するのかも、比較ポイントとなります。契約社員の場合は専門性やスキルがより高いプロフェッショナルとなる場合が多いですが、正社員の方が仕事に対するコミットメントやモチベーションも高くなると言えるでしょう。
報酬体系
単に料金を比較するだけでなく、固定報酬なのか成果報酬なのかや、その定義と内容をしっかり確認しておくことが必要です。成果報酬は、必ずしも「成功」報酬ではありません。何を成果や成功と定義しているのかを、事前に確認しておくことが大切です。
例えばアポインターの場合、電話をするターゲット客のリストアップだけで成果とみなされるのか、アポを取得できた件数を成功とみなすのか。また商談まで担当したり、商談に同行する場合は、成約した場合にのみ報酬が発生するのかや、契約がキャンセルされた場合はどうするのかも、確認しておく必要があります。
コンプライアンス管理
商社を使って販売する際、販売にあたってコンプライアンス違反があった場合、その責任は商社が負うことになります。しかし営業代行の場合は、営業活動上で発生するコンプライアンス違反の責任が、その代行会社を起用した企業に及ぶこともありますから、営業代行会社とはそうした責任が回避できる契約内容にしておくことが肝要です。
最後に
一般的には、大量の営業パーソンを使って営業した方が効果的な場合や、スピーディーなアクションが要求される新規事業立ち上げや新製品ローンチなどの場合に、営業代行の利用が効果があるといえるでしょう。既存の営業パーソンによる営業活動が思うようにいっていない場合は、営業パーソンを換えればよいというよりも、別の原因があることが考えられます。営業代行会社には、営業戦略などのコンサルティングも提供しているところがありますから、まずそうしたサービスを使ってみるもの良いのではないでしょうか。