”営業マンが営業活動を行う時には、顧客のニーズや問題を把握してそのニーズを満たしたり問題を解決したりするような提案を行う”といった手法は定石のように耳にしていると思います。このように取引先が抱えている課題や問題点に対しての解決策を提案し、それを実現するような商品やサービスを営業するのが「ソリューション営業」です。

実際客先に出向き一生懸命ヒアリングして、顧客に対して様々な提案を行って成功しているでしょうか?ソリューション営業では成果を出せない企業もあると思いますが、そういった場合は営業手法を変える必要性が生じます。今回はそのソリューション営業とは異なる手法の一つであり、最新の営業手法と言われる「インサイト営業」をご紹介します。インサイト営業は変革指向型の営業手法とも言われていますが、どのようなものなのかを事例をもとに詳しくまとめていきたいと思います。

 

営業を取り巻く変化

ソリューション営業は終わった

ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2012年12月号(日本版)には「ソリューション営業は終わった」といったタイトルの論文が掲載されました。この論文の著者はマネジメントシンクタンクであるコーポレート・エグゼクティブ・ボード社のディレクター3名であり、1400社以上のB2B顧客をリサーチしたデータから分析され執筆されています。この中で著者は顧客の顕在化された要望に応えるという受動的な営業手法ではこれからの時代は生き残れないと述べています。

例えば90年代の初めにIBMがコンサルティング事業を始めた時、「問題解決技法 CPS」というIBMが開発した手法を使い企業の問題やニーズを解決へと導いてきました。IBMはこのCPSスキルを持った自社のSEをコンサルタントして派遣していましたが、顧客が成熟し自らソリューションできる段階になった時にニーズを失ってしまいました。「ソリューション営業」に価値が認められなくなったのと同様の現象が起こったのです。

「ソリューション営業は終わった」が執筆された2年後の2014年、同じ著者が「ソリューション営業からインサイト営業へ」という論文を新たに発表しました。ここで紹介されている「インサイト営業」とは、従来のソリューション営業に代わる変革指向型の営業です。

 

「顧客の状態」の変化

ソリューション営業が衰退した背景を考察すると、顧客状態の変化があげられます。以前の顧客は「自社の課題や問題を認識しているがその解決策までは把握していない」という状態でした。しかし自社内の調達部門や購買部門の進化によって、今は多くの企業が「ソリューションを把握している」状態にあります。IT技術の発達や情報化社会の進化も情報収集スピードを高めました。顧客は自分たちがどのような問題を抱えていて、どうやって解決すればよいのかを知っているのです。このような状態の顧客へいくら解決提案型のアプローチを試みても無意味です。世の中の全ての会社の状態が変化している訳ではなく、変化の渦中にあると言えます。しかし変化を把握し営業スタイルも先回りしていかなければ取り残されていくことになるでしょう。

 

インサイト営業とは

ソリューション営業からインサイト営業へ」では自らの斬新な提案によって顧客の組織や事業の仕組に変革をもたらす新しい営業スタイルとして「インサイト営業」が提案されています。ソリューション営業は顧客の顕在化された要望に応えるという受動的なものであるのに対して、インサイト営業は自ら変革を起こしていく能動的なスタイルです。

インサイトとは「洞察」ということです。目の前に既に現れている問題ではなく、内部に隠れているニーズを洞察して掘り起こしていかなければいけません。顧客自らもまだ気づいていないニーズを捉えて先見性のある提案を行います。ではどのようにインサイト営業を行っていったらよいのかいくつかポイントをまとめてみます。

経営理念やビジョンへのインサイト

「顧客すら気づいていない顧客の課題」を見つけるのは困難を極めるように思えます。それを見つけ出す鍵が企業の経営理念やビジョンにあります。経営理念やビジョンを実現するためにはどのようにしたらよいのかを提案することでインサイト営業を活用していきます。顧客の理念やビジョンに耳を傾け、その実現に向けたアイデアを一緒に創り上げます。その過程でニーズに合わせた提案を行っていくことが可能となります。

「顧客を想う」スタンスに移行

顧客に先回りするような営業スタイルでは、顧客以上に顧客のことを考えなければ成果は出ません。そのためには「顧客を想う」スタンスに移行しなければいけません。それには一つ一つの案件を丁寧に扱い時間を取ることも必要になってきます。インサイト営業とは実は労力と時間がかかる手法なのです。すべての顧客に時間を割くわけにはいきませんから、ターゲットを絞り込み明確にすることが重要になってきます。

インサイト営業とイノベーション

インサイト営業とは自ら変革を起こしていく能動的なスタイルです。これは「新しいものを生み出す」、「創出する」、「革新」というイノベーションとも密接な関係にあります。顧客自身が考えてもいなかったような斬新なアイデアで顧客の心を掴むにはイノベーションが不可欠だからです。

電通グループが配信している「電通報」では「イノベーション・アイデアの創出のために」という記事で次のように解説しています。

これからは、顧客コミュニティ(人)を中核に、共有された目的実現に向けて共に価値を生み出していく“動詞のブランディング”が欠かせません。顧客が共感できるような価値を提示し、体験され、満足情報がソーシャルメディアを通じて拡散していくことで、ブランド価値が高まっていきます。

引用:https://dentsu-ho.com/articles/302

電通報では顧客が共感できるような価値はわくわくするもものだと言っていますが、「英語で読み解くドラッカー『イノベーションと起業家精神』」の著者である藤田勝利も同じく“ワクワクすることがイノベーションのきっかけとなる”と述べています。同時に”ノベーションはすでにあるものの組み合わせ”で創ることが可能とも言っていますが、身近なものから顧客が共感しわくわくできるものを掘り起こしていくことがポイントと言えます。

 

インサイト営業の成功事例

IKEAオーストラリアのMANLAND

スウェーデン発祥で、ヨーロッパ・北米・アジア・オセアニアなど世界各地に出店している世界最大の家具量販店IKEA(イケア)のオーストラリア店は、2011年に「男性客の来店を増加させる」という試みを実施しました。その頃男性が小売業界の新たなターゲットになっていましたがIKEAのコンセプトやイメージは女性を対象にしたイメージが強いものでした。男性は女性についてきても場違いな感じがしてしまい、一緒にはショッピングはせず、一人店内で待ち時間を潰すことも多かったそうです。待っている間特に何を楽しめるわけでもない男性のためにIEKAは「MANLAND」つまり男性専用のプレイランドを作りました。

Xbox360、ピンボールゲーム、サッカーゲーム、無料のホットドッグ、スポーツが映し出されているテレビなどが設置され女性が買い物をしている間、パートナーの男性が自由に遊べるようになっていました。これは父の日がある週末に実験的に行われましたが、訪問客は前年同時期よりも8%増加したということです。インサイトとは共感できる価値観であり、隠れたユーザーの本音です。IKEAはショッピング嫌いな男性の本音をくみ取り共感できるサービスを開発することができました。

「got milk?キャンペーン」

アメリカ・カリフォルニア州の有名なCMの事例です。カリフォルニア州では、1980年から1992年まで、一人あたりの牛乳消費量が減少しました。ミルク協会は“牛乳は体にいい”と一生懸命訴求しましたが効果はあがりません。そこで牛乳好きの人たちに1週間牛乳を断ってもらい、どういった場面で牛乳を飲みたくなったか調査してみました。するとシリアルやクッキーを目の前にすると牛乳がほしくてイライラするという回答を得られました。そこでCMでクッキーにがぶりと噛みつく映像と「got milk?」(牛乳ある?)というコピーをかぶせることで、多くの視聴者の心のスイッチを押すことに成功したのです。思わず牛乳が欲しくなってしまうようなインサイトを発掘し、キャンペーンを広げたことで、それ以降牛乳の売れ行きが増加しました。有名クッキーメーカーオレオともコラボしました。

コンビニの買い物カゴ

日本のコンビニエンスストアでも「隠れた消費者の本音」を発掘したことで売り上げを伸ばした事例があります。それはPOSデータを分析した時にほとんどの顧客が1点か2点のみで、購入点数が増えるに従って割合が減少している原因を分析したことです。なぜ1,2点しか購入してもらえないかというとそれ以上持つと両手がふさがってしまうという理由でした。そこで店内に数か所買い物カゴを設置するようにしたところ、購入点数が伸び、売り上げも上昇したということです。

最後に

今回ご紹介した事例のように時代のニーズは顧客さえも知らない本音を発掘して先回りして提案をする「インサイト営業」へシフトしているとも言われます。インサイトは身近なものにヒントが隠れている場合が多く、事例のように細やかな観察と柔軟な視点で発掘することが可能です。消費者インサイトを知ることで、マーケティング戦略も変わってきます。時代の変化に合わせた戦略を立てていくよう見通しを持つようにしましょう。

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・顧客に直接向き合う営業だからこそ手に入れられるインサイトをまとめ、商品企画に提案をすること。
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