「PEST分析」のPESTとは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4項目の頭文字を取ったもので、PEST分析は経営戦略や事業戦略を考えていく上で役立つ代表的なフレームワークです。今回はビジネスの戦略上不可欠となるPEST分析について、目的や活用方法などを詳しく解説してご紹介します。

 

PEST分析について

PEST分析はアメリカの著名な経済学者フィリップ・コトラーが、自社業界を取り巻く外部要因を調査する手法として提唱しました。コトラーは『コトラーの戦略的マーケティング』という著作の中で「調査をせずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場参入をしようとするようなもの」と説明しています。

自社業界のビジネスは政治、経済、社会、技術的といった社会全体の変化や影響を受けます。こうした自社を取り巻く外部環境要因のことを「マクロ環境」といますが、PEST分析では中長期的に業界を囲むマクロ環境を把握し、どの項目がどのくらい自社に影響を与えるか分析し今後の営業戦略を決定していきます。ちなみに社会全体を視点とするマクロ環境に対して、自社を取り巻く市場の動向や競合の状況といった視点から見るのが「ミクロ環境」です。ミクロ環境の分析には「ファイブフォース分析」が使われます。

 

引用:https://stat.ameba.jp/user_images/20141120/09/free-agent999/ac/ba/j/o0555041913134641885.jpg?caw=8

 

PEST分析の目的

PEST分析の主な目的は以下になります:

・将来の変化や事業に影響を与える要因を見落とさない

・外部環境の変化を敏感に察知して時流に乗り遅れない

・中長期的なマクロ環境を把握し常に仮説を立てて不測の事態に備える

・新たな環境下で素早く柔軟な立ち位置を築き競合の優位に立つ

言い換えるときちんとPEST分析を行っていないとマクロ環境トレンドにうまくのれず、大企業でも破綻の可能性があるということです。次項ではPEST分析のそれぞれの項目を解説します。

 

Politics(政治的環境要因)

政治や法律、税制の変化といった行政面から、市場環境を分析する。

 

■Politicsの項目

・法律、法改正、判例、規制緩和

・条約

・税制

・政治、政権体制などの動向

・公的補助、判例・規制緩和、助成

など

 

例)消費税の引き上げが行われた時経済の動向に大きな影響を与えました。テレビや冷蔵庫などの大型家電や不動産物件など価格が大きいものは購入額に大きな差がでてしまうため、駆け込み需要が起こりました。消費税改正に向けた動きをしっかりと把握し、戦略を立案する必要があります。

 

Economic(経済的環境要因)

経済成長や景気、物価、株価や為替、経済成長率、原材料の価格変動など経済の動向変化を分析する。

 

 ■Economicの項目

・景気動向

・賃金動向

・株価、為替、金利

・物価、消費動向

・経済成長率

・消費動向

など

 

例)PESTの構成要素の一つである「経済的環境要因」の需要と供給のバランスは、価格に影響を与えます。例えば為替が円安にぶれると輸入食材を扱っている食料品店や外食産業は仕入れ価格が高騰します。景気動向、為替の変動に注視してリスクヘッジを行う戦略が必要になってきます。

 

Social(社会的環境要因)

人口や流行など生活者のライフスタイルの変化面から市場環境を分析する。

 

■Socialの項目

・人口、人口構成、密度

・社会インフラ

・流行、世論、事件

・高齢化、少子化

・言語、教育、宗教

など

 

例)社会的環境要因の一例として「少子化」があげられます。少子化で学校など教育事業の市場は縮小するともみられますが、一人当たりの教育費を手厚くする層を取り込むチャンスとも捉えることもできます。他にも「単身世帯の増加」といったライフスタイルの変化もあります。こうした変化を掴むことで、一人分の総菜を小分けにして販売する戦略を立てる食品業界も増えてきています。社会的環境要因はそれほど変動のある項目ではありませんがしっかり分析しておけば、需要の把握や喚起、ターゲット設定などがしやすくなります。

 

 Technological(技術的環境要因)

技術の変化による影響を分析

 

■Technologicalの項目

・インフラ

・ビッグデータ

・IT、IoT技術

・新技術、開発

・特許

・イノベーション

など

 

例)IT技術の進歩は目覚ましく、これはマーケティング業界でも同様です。マーケティングのIT化によって、生活者の動きがデータとしてリアルタイムに可視化され、リアルタイムでPDCA改善を行えるようになりました。人々の生活にスマートフォンが浸透し、ユーザーとの接点やブランディングもこうした技術を前提として行われなければなりません。

イノベーションも活発で、特許庁ステータスレポートによると2015年に日本国特許庁を受理官庁としたPCT国際出願件数は43,097件、2014年に世界全体で出願された特許出願件数は268.1万件といずれも過去最高を記録しています。アイデア創出の流れは世界的にみても大きいものです。次々生み出されるイノベーションや技術革新のペースに遅れることなく、早い変化に柔軟に対応できる体制が必要になっています。

 

PEST分析のポイント

変化に注視しトレンドにのる

PEST分析で大切なのは常に「変化」に注視することです。PESTで分析するマクロ環境の変化を掴むことで、世の中の変化や流れ、トレンドを味方につけた商品開発や営業戦略をとって大きなヒットを生み出す可能性も高まります。自らの組織・商品を時代に即したものにして時流にのることで、業界で生き残っていくことができるのです。

 

他のフレームワークへ落とし込む

PEST分析では自社にプラスやマイナスのインパクトを与え得る要因を整理し、その影響度を評価します。これを経営戦略として活かすには、関連する他のフレームワークとともにクロスさせながら分析を活かしていく必要があります。例えば「SWOT分析」というフレームワークがありますが、SWOT分析では、組織を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの軸から評価する手法のことで次のような課題を解決していきます。

・どのように強みを活かすか?

・どのように弱みを克服するか?

・どのように機会を利用するか?

・どのように脅威を取り除く、または脅威から身を守るか?

SWOT分析における「機会(Opportunity)」や「脅威(Threat)」といったものはマクロ的な要因に左右されることが多いので、ここにPEST分析で得た分析と影響度を落とし込んでいきます。SWOT分析については別の記事で詳しくご紹介します。

 

PEST分析の活用事例

最後にPEST分析の活用事例を2つご紹介します。

 

同性パートナーを生命保険の受取人に指定できるようにしたライフネット生命

ニュースで耳にした方もいるかと思いますが、2015年に渋谷区、世田谷区が同性パートナーシップ制度を始めました。それぞれの区役所で同性カップルに対して「結婚に相当する関係」だと証明する書類を発行しています。こうした婚姻制度の多様化を受けて、ライフネット生命は、同性パートナーを生命保険の受取人に指定できるようにしました。

従来、死亡保険金受取人の指定範囲は原則「戸籍上の配偶者または2親等内の血族」としており、異性の事実婚のパートナーの場合は、 一定の条件のもと死亡保険金の受取人に指定いただくことが可能でした。このたび、みなさまのご要望の高まりを受け、2015年11月4日から、同居期間など一定の条件のもと同性のパートナーを受取人にご指定いただけるようにいたしました。

引用:https://www.lifenet-seimei.co.jp/rainbow/

 

同社のHPでは上のように説明されていますが、これはPEST分析におけるPolitics(政治的環境要因)やSocial(社会的環境要因)の変化を察知し、いち早く死亡保険金受取人の範囲拡大という保険契約の改定を行った例です。

 

Brexit後にロンドンに本部移転を計画するドイツ銀行

2016年6月24日(日本時間)、イギリスは国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)を選択しました。この政治的な環境変化は日系企業をはじめ、多くの企業に影響を与えています。なかでも金融業界への影響は大きく、これまでEU下で単一パスポートにより、金融機関がEUで免許を取れば域内どこでも営業ができる便利な制度でしたが、Brexitによって英国で免許を取得した金融機関はEU内の他国に拠点を移し、免許を取り直さなければならない恐れがあります。実際ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、JPモルガンなどの大手金融会社は、ロンドンでの雇用と業務を他の場所へ移すと既に公式に発表しています。

この中でドイツ銀行は2023年に本部をイギリスのムーアゲート(Moorgate)付近に移転する予定を立てています。他の金融会社の動きとは敢えて逆の姿勢をみせる同行は、イギリスへ投資を行うことでロンドンとの関係重視を計っています。ライバルと同じことをしていては打ち勝てないという同行の狙いが透けて見えます。

 まとめ

PEST分析ではマクロ環境を把握したうえで、その変化をどう自社の戦略に活かしていくかがポイントとなります。事例で上げたライフネット生命やドイツ銀行のように、ひとつの環境要因の動きから自社の方針を柔軟に対応させるようなことが必要となってきます。同じ環境要因の中でも取るべき戦略は企業ごとに異なります。他のマーケティングフレームとも組み合わせながらPEST分析を事業戦略に役立てていくようにしてください。

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