「まいど!儲かりまっか?」ご存知の通り、商人の街大阪の挨拶文句です。大阪の人は皆が毎日このような挨拶をしているわけではないのですが、この挨拶文句だけでこの記事が説明できてしまえるほど、ここには営業の真髄があります。
セールスパーソンにとって成約や受注は、一番の喜びです。受注のために営業をしているといってもよいくらいですから、受注したら目標達成!と思っていませんか?また受注できた実績と経験を生かして、早速次のターゲット客にアタック開始!と思っていませんか?
受注することは非常に大切ですが、実はそれより大切なのが、アフターフォローです。今回は既存顧客へのアフターフォローの意義とやり方について、ご説明します。
アフターフォローはなぜ必要か?
冒頭の大阪のあいさつはまず、「まいど!」で始まります。これは初めてのお客様に対する挨拶ではなく、いつも足を運んでいるお客さんへの挨拶です。この言葉が発せられるということは、モノやサービスを売った後でも、定期的にお客様のところに行っていることがわかります。
また次に、「儲かりまっか?」と聞きます。ニュアンスとしては「お元気ですか?」といった意味になりますが、本質はお客様の商売を気にする心遣いです。B2Bの法人営業は、個人向け営業と異なり、お客様がお客様の事業で儲かるようなモノやサービスを売ることにあります。法人営業におけるアフターフォローでは、アフターフォローのハウツーを考える前にまず、自分が売ったモノやサービスでお客様が満足していることよりも、お客様の収益に貢献しているかを確かめることをを意識してください。
アフターフォローの意義は、販売するモノやサービスに付加価値をつけることにあります。
この付加価値は、例えば物理的に追加機能をつけるなどの投資ではなく、セールスパーソンの心遣いと時間だけでつけられるものです。
アフターフォローを行うメリットは?
全く新しい顧客への販売努力をして新規受注を得ることは、顧客のポートフォリオを広げるために重要です。しかし既存顧客へのアフターフォローをするのと、どちらが労力がかからず効率的でしょうか。既存顧客を訪問して会話することの一番のメリットは、新規受注よりも少ない労力でリピートオーダーにつなげられることです。しかしその他にも、以下のようなメリットがあります:
- 自社製品のアピールポイントがどこにあるのかが、確認できる。
- 自社製品の改善点がどこにあるのかが、確認できる。
- 顧客の不満が溜まらず、タイムリーに解決できる。
- 既存顧客の新たなニーズが聞きだせ、別の商材への拡販につながる。
- 既存顧客に満足してもらえることで、他の顧客へも紹介してもらえる。
- 顧客の購買計画や財務状況などが把握でき、今後の効率的なアプローチができる。
- 競合相手の製品、サービス、価格レベルなどの情報が得られる。ただしこれらの情報が顧客から得られるということは、あなたの製品の情報も競合相手に流れる可能性もあります。
逆にアフターフォローを「しない」と、以下のリスクが発生します。
- 競合相手が顧客にアプローチし、次の発注を獲得してしまう。
- 既存顧客の満足が100%得られず、業界口コミで自社の評判が落ちて、新規顧客獲得に不利になる。
なぜ今回お客様はあなたの製品を買ってくれたのでしょうか。法人の場合は、購入にあたっては複数のオファーを比較することが必須ですから、あなたの製品は他社より何らかのメリットがあったことになります。しかしそのことに満足せず、受注の影には競合相手が複数あったということを意識することが大切です。また受注した後も、次の発注を狙う競合相手が常にいることも忘れないで下さい。
アフターフォローの仕方
アフターフォローは、業種や販売するモノやサービスによって様々なやり方がありますが、基本は実際に顧客を訪問し、以下の点を目的として、売ったときとは逆に顧客の話を聞いたり聞き出すことに注力します。
① 販売した製品のフォローアップ
自分が売った製品がどのよう使われているかや、サポートが必要な問題点がないかを聞いて、改善すべき点があればすぐに対応する。
② 次の受注につなげるためのフォロー
継続的な購入が必要な商材の場合は、同じ製品もしくは、同じ製品のアップグレード版などを継続して紹介することで、リピートオーダーにつなげる。
③ 別の製品や別のビジネスへの商機につなげるためのフォロー
顧客と色々な会話を進めるなかで、例えば別の種類の製品のニーズなど、これまで気が付かなかったビジネスチャンスを探す。顧客から、今後に役立つ新規ビジネス開発のアイデアが出ることもある。
アフターフォローで継続的に売り上げを上げる具体例
製造業の場合
製造業の場合のアフターフォローは、販売した製品の設置やメンテナンス、修理、部品供給という形で行われるのが一般的です。このプロセスは、技術部やアフターサービス部の業務であって、営業のアフターフォローではありません。しかしメンテナンスや修理の需要がなくても、営業として顧客を訪問して確認すると、継続販売につなげられるポイントがあります。
冒頭の大阪の「儲かりまっか?」を思い出してください。販売した製品が問題なく使えているかを、故障がないかという観点からではなく、その製品を使うことで顧客の収益に貢献しているかを確認するようにしましょう。製品が製造現場で使われる機械であれば、収率はあがって生産性向上につながっているかの確認まですることで、顧客の信頼度はあがるはずです。
またシステム会社が財務会計システムなどを販売した場合は、そのシステムを導入することで、単なる作業性だけでなく人件費や管理費が節約できているかどうかまで確認することで、次の提案が的確にでき、継続販売につながります。
別の製品やアップグレード品の紹介にあたっては、ディスカウントやなんらかの特典を提供して継続購入のメリットを強調することは、今更いうまでもないでしょう。
商社の場合
商社は基本的に、モノを仕入れて売るのがビジネスですが、販売先の顧客のフォローだけでなく、仕入先のフォローも必要です。仕入れ先が複数の商社を使ってモノを販売している場合は、仕入先のフォローをおろそかにすると、商権を失うことにつながるからです。既存顧客へのアフターフォローは製造業の場合と同じように行ったうえで、更に定期的に仕入先へのフィードバックを欠かさないようにするべきです。
フィードバックとは、販売先での製品の評判、競合先の製品の内容、市場動向や予想など、仕入先に役立つさまざま情報を提供し、他社よりも有利な条件で仕入れさせてもらうようにすることです。有利な条件を顧客への販売に反映させることで、販売増につなげることもできるでしょう。
その他のサービス業の場合
モノではなく、サービスを顧客に提供する場合を考えて見ましょう。リサーチやマーケティング会社の場合はどうでしょうか。質の高い調査を実施するのは営業の仕事ではありませんが、マーケティング調査結果を納入した後には、調査結果が役に立ったかどうかの確認を、単なるアンケート形式ではなく実際に顧客のところに赴いて確認することが重要です。そしてその際に、その調査をしたことで顧客の販売増につながったかまで確認し、つながっていないようであれば、既に行った調査も生かした別のアプローチを提案して継続的な関係を築いていくことも可能です。
まとめ
アフターフォローの重要性、お分かり頂けたでしょうか?営業においては、新規顧客を増やして拡販することも大切ですが、既存顧客を維持してリピートオーダーをとっていき、顧客層を厚くすることで営業成績を伸ばす方が効率良く業績が上げられます。既存顧客のアフターフォローには色々な手法がありますが、コンタクトを継続して、販売した自社の製品やサービスで顧客が利益をあげているかどうかを確認し、競合先よりも優位にたつようにすることが基本です。