営業戦略にとって重要なポイントのひとつに、販路開拓があります。しかし特に中小企業や事業を立ち上げたばかりのベンチャービジネスの経営者の中には、どうやって販路を開拓したらよいのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は新規販路開拓の重要性やそのやり方についてご紹介します。
販路開拓とは何か
販路とは販売ルート、つまり製品やサービスを販売するための経路といったもので、販売チャネルとも呼ばれることがあります。
消費者向けのB2Cビジネスの場合は、コンビニで売るかネットで売るかといったような流通経路を指す場合が多いです。法人向けのB2Bビジネスの場合は、一般的に販売方法といった意味で使われることが多いです。
販路開拓とは、新たな販売ルートよって新規顧客を得るための取り組みとなりますが、特に新しく事業を始める起業家やベンチャービジネスにとっては、販路開拓は資金調達と同じくらい苦労する部分ではないでしょうか。販路開拓は、既に事業が進んでいる企業にとっては、既存の販路を使った単なる拡販とは違って、独創性も必要とされます。
販路開拓はなぜ必要か
ベンチャービジネスの起業や新規事業立ち上げでは、販売先がなければ事業が進まないので、販売先の開拓が必須であることは言うまでもありません。ただ闇雲に市場に飛び出して行き当たりばったりに販売しても非効率であり、無駄なコストがかかてしまいます。従って販売するための道付けや方法となる「販路」を確立したうえで、それに沿って営業活動をすすめるのが効率的です。
またベンチャービジネスだけでなく、既に販路をもって事業をおこなっている企業においても、企業を成長させるためには販路を広げたり新しい販路を開拓することで、顧客のポートフォリオを増やしていくのが必要です。既存顧客のフォローも大切ですが、既存顧客からのリピートオーダーだけでは大きな成長はのぞめません。また競合先に既存顧客をとられる可能性があり、その際は成長どころか業績悪化にもつながるので、新規顧客取り込みにより販売先の多様化を維持することが必要です。
販路開拓の仕方
新規の顧客を獲得するためにはまず、自社の製品やサービスを知ってもらうための活動を行う必要があります。B2Cの消費者向けビジネスの場合は、テレビの宣伝や新聞・雑誌の広告、ダイレクトメールなど従来型の宣伝方法に加えて、ホームページやソーシャルネットワーク、ネットショップなどのITツールの利用が有効ですが、B2Bの法人向けの場合はどのようにしたらよいのでしょうか。
法人営業での販路開拓は、取引先である既存顧客からの紹介といったかたちで進められることが多いです。しかしこの方法は受身であり、紹介してもらえる新規顧客も限られてしまうでしょう。自ら販路を開拓する場合は、以下の順番で行うことが必要です。
① ターゲットとなる新しい顧客セグメントを特定する。
② 特定された顧客候補に販売する製品やサービスを決める。
③ どうやってアプローチし、どうやって販売活動をするかを考える。
先に販売する製品やサービスありきで、①と②は順番が逆になることもありますが、いずれにしても特別なプロセスでも目新しい手法でもありません。ここまでは、誰もが理解しているのではないでしょうか。ではこのプロセスを進める具体的な方法を、ご紹介します。
マーケティングと戦略
ターゲットとなる顧客セグメントを特定して効率的な販路開拓を行うには、現在自社が取り扱っている製品やサービスがどこで売れている情報や、今後どこに売れるかを調査・分析し、販売戦略をたてます。市場やユーザーが既に確定している商材やサービスの場合でも、時代は流動していますから、これまで考えたこともなかった市場セグメントにも需要が発生する可能性があります。従って市場調査は、多角的におこなう必要があります。
自社で既にマーケティング部がある場合でも少し視点を変えたマーケティングを実施するか、マーケティング会社を起用して分析してもらうことに投資してみることも、効果があるかもしれません。このマーケティングと戦略づくりの段階で、何が販売できるかも検討します。
展示会への出展
自社の製品やサービスを新しい顧客に知ってもらうためには、業界に特化した展示会への出展が効果的です。これまで付き合いのなかった新しい顧客候補と知り合えるチャンスでもありますが、出展するだけでは意味がありません。ブースを訪れた顧客の情報をデータベース化してコンタクトを継続し、受注につなげるフォローをすることが非常に大切です。
業界紙での紹介記事の利用
業界紙で自社の製品や活動内容を紹介してもらう記事を作成してもらうことも、新しい顧客の注目を集めるという点で有効な手段となります。コストはかかりますが、必要投資と考えましょう。
コンサルティング・サービスの利用
プロの経験と実績による効果的な販路開拓を行いたい場合は、コンサルティング・サービスの利用も検討の価値があるのではないでしょうか。こちらの手段も費用はかかりますが、費用対効果は期待できます。特に海外での販路開拓をおこないたい場合は、必須のサービスといえるでしょう。
マッチングサービスの利用
中小企業支援機関の他、日本政策金融公庫、中小企業庁などでも、売り手と買い手のニーズを登録してデータベース化し、ビジネスの可能性があるニーズを検索できるサービスを提供しています。こうしたサービスの利用により、非常に効率的にターゲットを特定することが可能です。
助成金や補助金の利用
中小企業による地域産業振興のため、新事業の販路開拓の経費の一部に対する助成金を提供する地方の公益財団法人があります。また販路開拓支援の補助金制度を実施している地方都市もありますし、中小企業庁でも販路開拓につながるさまざまな補助金を公募しています。こうした補助金を利用するとともに、経験豊かな機関からのアドバイスも受けることが可能です。
インターネットを用いた販路拡大
最近では、実店舗で商品を見てECサイトで購入するケースが増えています。また、出品者側にとっても営業時間の制約からの開放、店鋪代や人件費等の削減等、ネット販売を行うメリットは多いです。実際、BtoCのEC市場は、2017年には16兆円を超え、物販系分野においても8兆円以上の規模まで成長しています。
ECサイトで販売を行う方法ですが、ECモールを使って販売を行うか、自社でECサイトを構築して販売を行う2通りが考えられます。
1. ECモールへの出店
ECモールを使うと、販売手数料が掛かるため利益が小さくなりますが、サイトの構築・保守管理・集客等を行わなくて済みます。商材次第ではありますが、小規模なうちはECモールを使った方が効率的な場合が多いです。
代表的なECモールとしては「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon」「ポンパレモール」「Qoo10」「LOHACO」「Wowma!」等があります。自社商品と各モールの相性を考えた上で出品することで販路を増やしてみてはいかがでしょうか。
2. 自社ECサイトの作成
売上が拡大し、ECモールに支払う手数料がサイトの構築・保守管理・集客等の費用より高くなった場合は、自社ECを立ち上げることコスト削減が可能になります。また、ECモールではそのECモールに来訪している顧客にしかアプローチできませんが、自社でECモールを立ち上げ、プロモーションも自社で行うことで、アプローチできる顧客を増やすことも可能です。
最近では、「BASE」「STORES」「Shopify」など、プログラミング不要で自社ECサイトを簡単に作成できるサービスが登場しており、自社でECサイトを立ち上げるのは以前より手軽に行えるようになりました。また集客に関してもブログ・Twitter・Instagram・YouTubeなど無料で行えるサービスがあるので、広告費を抑えて集客を行うことが可能です。ECモールと比べ難易度は高いですが、挑戦することで利益拡大に繋がるので、挑戦してみてはいかがでしょうか。
市場開拓
間接的な手段となりますが市場開拓といった方法もあります。自社の製品やサービスがこれまでとは違う発想で、違う市場に売れるかの研究をしてみることも、販路開拓につながるでしょう。
例えば、食品加工向けの原料を販売している会社が、同じ原料が化粧品原料としても使えることに注目し、用途の開発を行って化粧品業界に新たな販路をつけるなどがあります。化粧品業界に納めているものが、ペット産業にも使えないかというアプローチもあるでしょう。具体的な例としては、富士フィルムの化粧品分野への参入の他、産業用ヒーターの製造からコードレスの充電式保温座布団を発案した福井県のトップテクノ社などの例もあります。
市場開拓を行う際には、マーケティングの他に、研究開発費にも投資する必要があります。
まとめ
販路を開拓するためには、まず自分がどこにいるのか、市場でどういう立ち位置にあるのかを見極めて、どちらに向かっていけばよいかの戦略をたてることが第一歩となります。方向性を明確にしたうえで、販路開拓にかけることが出来る予算を考慮しながら、自社にとって有効だと思われる方法を選びましょう。専門家のアドバイスや営業コンサルティングを受けたり、政府機関や財団法人の支援や助成金を受けるのも有効です。ぜひ今回紹介した手法の中から、自社に合う販路を見つけてみてください。