ソリューション営業とは、顧客とコミュニケーションを取りながら、顧客の抱えている問題やニーズをつかみ取り、その問題の解決策を提供する営業手法です。「課題解決型営業」と訳されることも多いですが、どのようなものなのか本質を理解していないと上手く成果をだすことができません。ここでは成果が出せるソリューション営業のポイントについて、事例をもとに詳しく解説していきたいと思います。
目次
ソリューション営業と他の営業手法の比較
営業の形態には「ソリューション営業」以外にも「御用聞き営業」や「インサイト営業」といったものがありますが、新しい手法なら単純に良いと区別されるわけではなく、業界や顧客スタイルによって用いる営業手法を使い分けていく必要性があります。
- 「御用聞き営業」:注文を聞いて回る
- 「ソリューション営業」:現在分かっている問題を解決する
- 「インサイト営業」:まったく新しいサービスや商品を提案する
御用聞き営業は地域密着型の小売店や、年齢層の高い個人客相手には需要があるサービスかもしれません。何が必要なのか聞いてきて、言われたものを用意する営業手法となります。新しいリードの創出やさらなる収益の拡大は見込めません。
インサイト営業は既に自社の課題や問題の解決方法も自分で分かっている顧客に対して、潜在的なニーズを掘り起こして、イノベーションを創出するような提案を行うような営業です。ITの普及と情報化社会となった今、ソリューション営業を超えてシフトしていく営業手法としても注目されています。
ソリューション営業の必要性
新しい営業手法が開発されてきたからといってソリューション営業の必要性がまったくなくなったわけではありません。自社で調査部門や分析部門を持たず「どの商品・サービスを選択すべきか分からない」または「自分のニーズを正確に把握できない」という顧客層もあるからです。逆に物や情報が溢れかえってしまったことにより混乱してしまっている顧客もいるのです。しかしこのソリューション営業もまた、要求されるニーズに応えるという従来の受動的なスタイルから、さらに必要とされるものを見つけだして提案していくという能動型のスタイルへのシフトも必要となってきています。
従来のソリューション営業
・顧客の課題の把握
・既に顕在化しているニーズや問題を解決する
・顧客に相談された案件に対処する受動的営業
新しい提案型ソリューション営業
・顧客の課題の想定
・潜在的なニーズをくみ取ってさらに良い改良やソリューションを提案する
・能動的な営業活動の実施
例えば地方銀行には融資のためのソリューション営業部門がありますが、このような部署も単に融資が必要な顧客のニーズに応えるだけではなく、「資金需要の創造」を自ら起こすような営業活動もしているわけです。人口の縮小や海外市場への顧客流出という情勢の中、やはり企業も需要を自分で生み出していくような営業活動が求められています。
ソリューション営業を実践するためのプロセス
1.顧客分析
ソリューション営業の準備として正確な顧客分析は必須です。代表者名、設立年、資本金、従業員数、事業内容といった基本情報はもちろん、その会社の経営理念や営業方針等、色々な角度から分析して情報収集することが大切です。分析を行う目的は「どのような課題を抱えているか」「何のニーズを必要としていると仮説を立てるためです。この分析にはマーケティングの3C分析等の専門的で高度なノウハウも必要になってきます。
2.仮説によって導いた課題の提示
情報報集を行ったら次に分析をして、仮説を立てなければいけません。どのような課題やニーズをターゲットが持っているか仮説を立てるスキルにも顧客の問題を可視化できる能力が要求されます。仮説を立てたら実際にアプローチをかけていきます。このアプローチにより、実際の面談・ヒアリングのプロセスへとシナリオが移行していきます。
3.ヒアリングによりニーズを把握する
ここでは顕在的なニーズにとどまらず、潜在的なニーズをも把握することが求められます。「課題や問題」については、顧客自身が気付いていないというケースが意外とあります。ソリューション営業の大事なポイントとしては、そのような点を顧客に指摘し気づかせるということもあります。ヒアリングは顧客に「気づき」を与えるまで突き詰めて行いましょう。ここでは質問によって正確なニーズを聞き出す質問力が問われます。
4.提案(プレゼンテーション)
ヒアリングによりニーズを把握することができたら、自社の商品やサービスを使ってどのようにその課題を解決していくか提案を行っていきます。商品内容の説明、商品のメリット・デメリット、他社での導入事例の説明などは基本的な内容です。これまでのプロセスには情報分析力や、仮説を立案する能力、ヒアリングでの質問力など様々な能力が複合的に要求されますが、全般的に大切なのはコミュニケーション能力です。コミュニケーションによって顧客と信頼関係を築かなければ、提案を行っても聞き入れてもらえません。これまで解説したステップを踏まえながら必要なスキルを磨くか、あるいは専門家と協力して戦略を勧めていくか決めていきましょう。
ソルーション営業の成功事例
PC用眼鏡を開発したJINS
株式会社ジンズは、群馬県前橋市と東京都千代田区に本社を置くメガネチェーン店「JINS」などを運営する企業です。同社は度の入っていないPC(ディスプレイ)専用メガネを開発し販売しています。
「PCやスマホの画面を見ていると目が疲れるのでなんとかしたい」といった顧客ニーズをくみ取って、スクリーンからのブルーライトをカットする眼鏡を作ったのです。これまで眼鏡=目の悪い人のものという認識だったのを、目が健康な人にも市場を広げることに成功しました。
同社の販売サイトでは「ひとつでもあてはまったら、ブルーライト対策を!」とうたって、次のような人にこの眼鏡を使うことを提案しています。
1日1時間以上パソコン・スマホを使う
寝る直前までスマホを見ていることがある
テレビが好き
暇な時はゲームをすることがある
眼鏡には縁のなかった人でも、上のような条件に当てはまる人は多いと思います。そして確かに目がとても疲れると気が付いた人はこの商品を試してみたくなるのではないでしょうか?これは顧客の潜在的なニーズを掘り起こす提案型のソリューション営業の事例といえます。
またニュースサイトでは「メガネで社員の集中力を可視化 - 「JINS MEME」企業向けソリューション提供開始」というニュースも配信されています。
このリリースでは
このたび提供を開始した「JINS MEME BUSINESS SOLUTIONS」は、従業員の集中状態を「可視化」するのに加えて、その効果を「高める」までをワンストップのサービスとして企業向けに提供するソリューション
と、JINSのB2B向けの営業が紹介されています。このようにB2CでもB2Bでも企業は積極的に提案型の営業を繰り広げています。
最後に
顧客をとりまく市場や経済の動向はめまぐるしく変化し、新たな営業やマーケティングの手法も次々開発されています。しかしどの手法を採用していくにしても基本となることは「顧客本位」の目線を持ち続けることです。今回ご紹介したソリューション営業でも、顧客主義に立ち、顧客が本当に必要とすることに応える、顧客にとってより良いサービスや改善を提案するということが土台となって成果を出せるのです。営業マンはその原点に常に立ち帰るようにしましょう。ソリューション営業は顧客と長期的に「Win-Winな関係を構築する」営業手法なのです。