【客単価を上げる方法】アップセル営業とその成功事例を紹介

顧客により金額の高い商品を買ってもらう営業アプローチを「アップセル」営業と言います。アップセルを実施することで、1人のお客様により多くの商品やサービスを利用してもらい、顧客1人当たりの売上や収益を増やしていくことができます。一つ一つの購入単価を上げていくことができれば効率よく売り上げを伸ばすことが可能となります。今回はアップセル営業で成功するためのポイントや注意点を解説していきます。

 アップセル、クロスセル、ダウンセルとは

既存顧客へのアプローチはアップセル、クロスセル、ダウンセル等様々なものがありますが、自社の既存顧客に対し、いつも購入している商品やサービスより上位のものを勧めることを「アップセル」と言います。「クロスセル」は既に購入してもらった商品の関連商品や別のものを勧めるアプローチです。「ダウンセル」は購入を渋る顧客にグレードと価格の落ちたものを勧める手法です。単なる値引きではなく、グレードの低い別商品を提案するということです。

アップセルの例

会員ランク別に機能が異なるCMS(ウェブ上でコンテンツをマネジメントできるシステム)でベーシック会員に、より便利な機能のついた上位ランクのシステムを勧めることで使用料金の単価アップを計ります。例えばDMを配信できるシステムで、ベーシックプランなら月間5000通まで配信可能なものを上位プランでは配信数を無制限にしたり、用意されているテンプレート機能が使えたりというように差をつけます。

また情報商材やニュースサイトなどでも無料情報公開ページを用意し、これ以上購読する場合は有料というようにしている場合があります。これも「お試し」で集客を計った後に上位の有料サービスを勧めてアップセル営業をかけている例です。

 クロスセルの例

ECサイトなどで掃除機を買った場合、「他のお客様はこのような商品も購入しています」というように関連した洗剤や機材、別メーカーの掃除機を表示させているのをよく見かけます。関連商品をショッピング時に表示し、本来の目的の品物と一緒に購入してもらうようにして売上単価をあげます。

ファーストフード店などでも、一般的にメインの他にサイドやドリンクを勧められます。一緒に色々購入してもらうことで顧客1人当たりの単価が上がります。このようにクロスセルは身近なところで行われています。

ダウンセルの例

賃貸住宅の営業で、予算の関係から契約をためらっている顧客に、間取りや日当たり等で条件が落ちる代わりに家賃も値引きされる部屋を勧めるのがダウセル営業です。あくまでダウングレードであり、上位プランの値引きではありません。顧客が重要視するのが立地条件であるならば、その条件は変えずに他の条件を譲歩してもらう代わりに、コストダウンも実現して契約に持っていけるようにします。

アップセル営業のポイント

アップセル営業で成功するためにはいくつか注意しなければいけないポイントがあります。ただ単に高いものを勧めたいという気持ちだけでは「強引な押し売り」をしようとしていると捉えられて信頼関係を損ない、逆効果になってしまう場合もあります。あくまでアップセルは「顧客のニーズを満たし」、「お客様の利益にもなる」ことを前提に行うことが必要です。

 効果・効率を具体的に示す

信頼関係を損なわないようにするためには、プランのアップグレードや高いものを勧める際に「根拠を説明する」ことが重要です。なぜ高いサービスの方がよいのか具体性のあるメリットをきちんと説明するようにします。

 費用対効果の根拠を説明する

サービスやプランをアップグレードすることによって、収益増加や効率化など確実に得られるメリットを具体的に説明するようにします。

 現在検討中・契約中の商品との繋がりを示す

まったく新しい商品を勧めるのではなく、今契約いただいているものからさらに大きな成果がでるもの、効率が上がるものを勧めるようにします。

 割安感を示す

アップセルをかける際は顧客の心理的なトリガーやタイムングを正しく読むことも重要です。例えば「セットで買うとお得」とか、「コスパが良い」と割安感を持ってもらうと心理的トリガーにかかりやすいのです。

例えば広告営業などで、半年毎に契約している顧客に対し、年間契約をお勧めする方法です。まとまった契約により月々の割引率が大きくなり、月あたりの広告単価が下がるメリットを示せれば成功率も高まります。

化粧品の販売などでも美容液と化粧水を別々に購入するよりもお得なセットを用意したり、まとめ買いの場合は特典を付けたりするなど工夫することで客単価のアップが計れます。

顧客側のメリットの具体的な提示

営業マンが勘違いしやすいのは営業する時のポイントをはき違えることです。いくら商品の機能面の便利さを強調しても、また会社の社会貢献度をアピールしても、それは顧客の意思決定の重要なポイントとはなりません。顧客にとって一番大切なのは「金額をあげることによって得られる成果」です。ここをきちんと押さえて、顧客のニーズを満たしながら効果的にアップセル営業をかけられるようにしましょう。

アップセルの成功事例

 独自CRMとiPadの活用で成長した大塚商会

「たのめーる」や「たよれーる」で有名な大塚商会は、中堅・中小企業市場で圧倒的な存在感を誇る企業です。2015年は5,595億円、2016年は5,841億円の売り上げをあげ堅調に業績を伸ばしています。

大塚商会売上高(単体)と社員数の推移

大塚商会の成功要因はいくつかありますが、その一つに顧客企業へのクロスセル、アップセルを実現するCRM(顧客関係管理)を実現していることがあげられます。大塚商会では独自に開発したCRMシステム、「SPR(Sales Process Re-engineering)」で顧客の状況と営業の進捗状況を把握し、営業員をマネジメントしています。

SPRでは購入履歴から、商談のステータス管理、競合他社の導入状況などが可視化されています。また大塚商会では営業マン全員にiPadを携帯させ、客先でリアルタイムにSRPを活用できるようにしています。訪問する前にSRPのデータベースから情報を引き出し、何を提案すべきか、どの顧客にあたるべきか決めてから行動しています。2001年に導入され2004年より本格稼働したSPRシステムにより、効率の悪い飛び込み営業から、有望な顧客に対する提案活動へとシフトし、顧客ごとのニーズに合わせたアップセル営業をしかけていくことで成長を遂げてきました。

サイトを改善したカゴメ株式会社

1899年に創業したカゴメはトマトなど西洋野菜の栽培と販売を手掛けてきました。近年はトマトジュースで国内シェア約5割をしめる他、ECサイトで様々な商品を販売し売り上げも好調です。

こちらのECサイトも顧客目線に立って購入までのステップを簡素化したり、アップセル機能を盛り込んだりした改善を導入することで、購入率が20%上がったということです。他にもweb上で顧客管理や分析ができるシステムを取り入れる等、顧客フォローが可能になるようにしました。

最後に

ここで紹介した大塚商会とカゴメの2つの成功事例で分かるのは、アップセルは顧客をフォローできるシステム作りがあって成功しているということです。アップセルを行うには顧客満足を前提としたお客様の現状の情報が欠かせません。

そのためにはCRMを導入したり、顧客満足度を高められるような営業プロセスをマネジメントしたりする必要があります。注意するポイントでも説明したように顧客ニーズを満たさないアップセルは効果がないばかりか信頼を失いかねません。以上を踏まえて、アップセルを行っていくように心がけてください。

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