日本経済が回復基調にある中で、高齢少子化で労働人口は減少しており、有効求人倍率はバルブ期の水準に近くなっています。これは、労働者にとっては売り手市場であり、企業にとっては優秀な人材の確保がますます難しくなっていることを意味します。人材の確保には、適切な採用戦略と最適の採用プロセスが非常に大切ですが、採用プロセスに使える人員や予算は限られています。今回は、適切な採用プロセスを設計する際に考慮すべき点と、費用対効果の高い採用手法を選ぶポイントについて、ご説明します。
組織戦略と採用する人物のスペック
採用プロセスを始める前にまず、募集する人材のスペックを明確かつ詳細に決めなければならないといけません。このスペック作成にあたっては、単に採用人材が配属される現場の希望を取り入れた人材の募集要件だけでなく、会社の中長期的な組織戦略がしっかりと決まっていることが重要です。
現場は目先の需要のみにとらわれがちですが、経営者は中長期視点から採用する人物のイメージを持っているはずです。即戦力を求めるのか、会社は教育する余裕があるのか、将来の管理職候補を選ぶのかや、今は特定の職種でも将来的にジョブローテーションも視野に入れるのかなど、社内で組織戦略に対する考え方の統一を図っておく必要があります。
採用方法を決める
採用にあたっては、先に決めた採用する人材のスペックの対象となる特定の層にアピールできる手法を選ぶ必要がありますが、採用手法には様々なものがあります。手法によってかかる費用も違いますから、目的によって予算も考慮して検討しましょう。
採用方法は、社名も出した公開募集としてよいのか、競合先には知られないように募集するのかによっても変わります。また採用プロセスを始める前に、ライバル企業の募集状況やその掲載情報、また類似する求人等を調査して、他社とは差別化した募集をかける工夫も必要です。
どの採用方法を利用するにしても、自社をアピールするツールを準備しておくことは必須です。WEBサイトやSNS広告の他、最新情報のパンフレットなども用意しておきましょう。
次に、色々な採用方法をご紹介します。
インターネット媒体を利用した採用方法
ここ数年の傾向として、求職者の就職活動は、就職関連サイトや企業のホームページなどインターネットを利用したものが主流となっていますので、インターネット媒体を使うことは有効です。しかし、応募者が多く集まりすぎた結果、母数が多くなるのでスペックに合う人材をピ見つけ出すのが困難になってしまったり、求人が公開情報となってしまうというデメリットもあります。
インターネット媒体を利用したものには、以下のものがあります:
- 転職サイト
リクナビNEXTやマイナビ転職などのサイトを利用するものです。多くの求職者がアクセスするため、応募者の数を集めて母集団を増やすことが可能となります。ただ求職者にとっては無料ですが企業側は有料になっているので、人は集まったが結局欲しい人材が見つからなかったという結果にならないよう、効果的な募集方法を決める必要があります。
- 自社ホームページ上で募集
基本的には会社に興味がある人がアクセスするので、会社の内容をよく知った応募者が集まりますが、求める職種に適する応募者が集まるとは限りません。何とかその会社に入社したい為、多少スペックが違っても募集されている職種に応募するような求職者も集まってくるでしょう。また採用時期が決まっている場合、その時期に集中して応募者が集まることも保証されません。
- ダイレクトリクルーティング
その他コストがかからないものとして、海外で普及しているLikedInなど公開されているデータベースを利用して、スペックに合う人材に企業から直接アプローチするダイレクトリクルーティングといった方法もあります。しかし自社のアピールの仕方やリクルート方法には、採用コンサルティングといったプロのサポートを得た方がよいでしょう。
- ソーシャルリクルーティング
SNSを利用して募集するソーシャルリクルーティングもあります。ただし、適切なマーケティングが行えなかった場合、不特定多数のスペックに合わない求職者が集まってしまう可能性が高いといえます。
インターネット媒体を直接利用しない採用方法
インターネットを直接利用しないものとしては、以下があります。
- リファラル採用
最近注目されている採用方法として、リファラル採用があります。
自社の社員に採用条件を伝え、適切だと思われる知り合いを紹介してもらうものです。どのような人材が求められているかや、どのような人材であれば自社に溶け込めるかはは内部の社員が一番良く理解しているため、有効な手段ではありますが、多くの候補の確保は期待できないでしょう。
- 人材紹介会社の起用
人材紹介会社は転職エージェントとも呼ばれ、企業に代わって人材探しから選考までの採用プロセスを代行するサービスです。人材会社へは、採用する人材の年収に応じた比率の報酬を払うことになるためコストはかかりますが、非常に効果的かつ効率的な採用方法です。この人材紹介会社について、もう少し詳しく説明します。
人材紹介会社の種類と選び方
人材紹介会社には、登録型人材紹介と、リサーチ型、いわゆるヘッドハンティング型とあります。登録型は、既に登録されている求職者のデータベースから企業の求人スペックに合う人材を探し出すもので、リサーチ型は、求職中とは限らない人材も含めてスペックにある人材にアプローチするものです。どちらの場合も成功報酬型の支払いとなりますが、ヘッドハンティング型の場合は通常前金を支払います。
また広範な業種や職種を取り扱う総合タイプと、医療やIT分野など特定の業界に強い専門タイプとあります。総合タイプでは異業種に埋もれている人材も発掘できる可能性はありますが、特定のスキルなどスペックがはっきり決まっている場合は、専門タイプを選んだ方がよいでしょう。但し専門タイプの場合は、非公開とはいえライバル会社とかち合う可能性はあります。
人材紹介会社を利用するメリットには、以下のものがあります。
- 全ての応募者の選考をしなくてよいので、時間が節約できる。
- 成功報酬型なので、転職サイトのようにコストをかけても結局採用者が決まらない、というリスクがない。
- 採用したい人材のスペックを簡潔に言葉でまとめるのは困難だが、人材紹介会社に対しては人材のイメージをはじめとした詳細な希望を伝えられる。
- 募集が公開されないので、ライバル会社に気づかれないように採用が出来る。
人材紹介会社を選ぶポイントとしては、以下のものがあります。
- 登録型の場合は、なるべく沢山のデータベースを持っているか、アクセス権をもっていること。
- 面接や採用のプロを多く抱えていること。
- リサーチ型の場合は、実績を多く持っていること。
採用面接
適切と思われる採用手法で採用をかけて応募者を振り分けたら、採用プロセスの要となる採用面接が始まります。質の高い人材を見極める為、面接者をリラックスさせることや、ヒューマンスキルを見るための質問方法など、面接官に必要なテクニックもあります。面接官のためのトレーニングや講習会もありますから、面接官となるスタッフにそうした教育をすることも必要でしょう。
また面接だけでなく、「適正診断ツール」の利用もオススメです。これは、面接だけではわからない、応募者が性格的に募集している職種に適しているかどうかや、潜在的なメンタルヘルスのリスクを診断するものです。
最後に
新卒採用の場合は予算もとりやすく、採用プロセスの期間も比較的長くとることが出来ますが、中途採用の場合は通常は短期間でスピーディーにまとめる必要があります。また中途採用の場合は、管理職やエグゼクティブといった高額の人材の採用を対象とすることもありますから、会社の成長にとっての貢献が期待できる人材を採用する場合は、高い費用をかけてでも効率が良い採用方法を選ぶ必要があります。そもそもどのような採用方法が自社のニーズに即して効果的なのかわからない場合は、走り出す前に採用コンサルティングのアドバイスを受けてはいかがでしょうか。