事例をもとに解説!営業活動でのKPI設定方法とは?

・営業成績抜群のAさんは毎日早く帰って休暇もしっかりとっているのに、いつも残業しているBさんの成績は伸び悩み。なぜなの?
・毎週の営業会議では、「今見込み客Aと交渉中だが、進捗が遅れている。これが決まれば四半期の予算は達成できる見込み」というような発言しかできない。もう少し説得力がある発言はできないだろうか?
・マーケティング部から、「有力顧客を紹介しているのに受注につながっていない」と批判される。論理的にその理由を説明できないか?

営業の第一線で働くセールスパーソンや、営業マネジメントをされている方には、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか?
KPIマネジメントというものをご存知でしょうか。ビジネスインテリジェンスでよく使われる言葉で、指標となる数字を活用するマネジメントです。上記のような疑問を解決するサポートとなる、営業部門におけるKPIの活用方法について説明します。

KPIとは

KPIとはKey Performance Indicatorの略で、通常「重要業績評価指標」や「重要経営指標」と呼ばれています。
横文字ですから日本で生まれた概念ではなく、数字による管理を目指す欧米の概念です。日本では、えてして営業は接待を中心とした人付き合いや、受注につながる話術といったような、数字で計測しにくい要因を営業活動の成果と関連付けがちです。しかしビジネス自体のスタイルが欧米化してきおり、顧客管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)などのツールを導入してデータベースや数値による営業管理をする企業も増えているビジネス環境では、営業活動自体も数値化することによる目標達成が、有効な手段となっています。

営業におけるKPIは、端的に言ってしまえばセールスパーソンのパフォーマンスを測るための指標です。
セールスパーソンのパフォーマンスは、究極的には最終的な売上高で測れるのではないか、と思う人も多いでしょう。しかし同じ売上げを達成するのに、セールスパーソンAさんとBさんでは全く異なるパフォーマンスをしている場合があります。この売上げを達成するためのプロセスを分析し、問題点を特定して改善に役立てる、ひいては売り上げ増につなげるのに使われるのがKPIです。つまりKPIは、売上げや利益率などの目標達成度を測るものではなく、目標を達成するためのツールとなります。またKPIを使って成果をあげるためのプロセスを管理することを、KPIマネジメントと呼んでいます。

尚KPIではいわゆるSMARTと呼ばれる、以下の点を考慮した指標の設定が必要です。

Specific:具体的であること
Measurable:計測可能であること
Achievable:現実的で実現可能性があるもの
Result-oriented or Relevant:結果指向であること
Time-bound:期限が決められていること

 KPI設定方法

KPIとして使われる指標は業種や会社の業態によっても違い、さまざまなものがあります。KPIを設定するためにはまず、営業プロセスの中で数値化できるものを洗い出してみましょう。一連の営業プロセスをセグメント化すると分かりやすいでしょう。主なものとして以下があります。

① セールスパーソンの営業プロセスの指標となるもの
• 新規顧客開拓のためにコンタクトをとった顧客数
• アポイント取得件数
• 顧客訪問回数
• サンプル送付数
• 見積もり依頼取得件数または見積もり送付件数
• 成約件数
• 受注単価
• 販売代金回収率

② セールスパーソンのパフォーマンスによる結果で、プロセスの分析に使えるもの
• 解約件数
• クレーム件数
• リピートオーダー率

③ 分析の参考となるもの
• 自社の市場シェア
• 競合先の値段
• セールスパーソンのマネジメントに対する満足度

KPIを設定する上での留意点

KPIを設定する上での留意点を、以下に挙げます。

• ①の場合は、他の要因に依存しない、あくまでもセールスパーソン自身のパフォーマンスにより数字を動かせるものとすること。

• 週当たり、月あたりなど、測定するための一定の期間を定めること。

• 効果の分析のため、それぞれの数だけでなく、顧客訪問に対する成約率や、新規成約に対するリピート率など、個別の指標を掛け合わせた割合もを出せるようにすること。

• 指標をいくつも設定するのではなく、管理しやすいように少ない数に設定すること。同じ結果が推測できるものがいくつも重複しないよう、またセールスパーソンの負担が増えないように、大事なポイントのみ選んで設定すること。

• 実際にKPIを適用する中で、設定したKPI項目が妥当なものかどうかを判断し、適宜見直すこと。

KPI分析で見えるもの

KPIは設定することだけが目的ではありません。出てきた数値を分析して、目標となる売上げと利益向上につなげることが重要です。設定したKPIを分析すると、以下のような改善すべき要因がみえてくるでしょう。

• 顧客コンタクト数や訪問数に対する成約率が低い場合は、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的な、非効率な客先訪問をしているのではないか。

• 商談回数や見積もり送付数に対して成約率が低いのは、プレゼンの仕方が悪いのではないか。

• 受注数は多いが解約や販売代金回収ができておらず利益向上につながっていないのは、成約のみを目的として安易に売っているのではないか。

• 電話でのアポは沢山とれているが、実際に訪問した後の見積もり依頼数や成約率が悪いのは、電話での応対は良いが面談での応対は悪いのではないか。キーパーソンを特定できていないのではないか、客先のニーズが把握できていないのではないか。

KPIの重要性

KPIを設定することの重要性やメリットとしては、以下の点が挙げられます。

会社全体の売上げ改善につながる

営業の場合は、実績を売上高で評価して、昇進や昇給、賞与を決めるのは間違いではありません。しかし、一生懸命頑張っているBさんの売上げがなぜ伸びないのかは、Bさん自身もわかっていないかもしれません。単なる結果だけでなく、それに至るプロセスを改善することで結果の向上につなげることが、KPI設定のメリットです。
もしBさんが、営業活動のどこをどう改善したらよいのかが理解できれば、Bさんの売上げは改善して会社にとってプラスになるでしょう。またBさんだけではく他のセールスパーソンも理解すれば、同じように売上げが改善して更にプラスになるはずです。

営業活動のわかりやすい指針となる

目標を数値で設定するだけでなく、目標をを達成するためのプロセスに対しても指標を数値で設定することにより、セールスパーソンが何をどのようにすればよいかが理解しやすくなります。

営業改善のための手段をタイムリーにとることができる

営業マネージャーとしては、例えば、訪問数を増やせば増やすほど受注につながるという結果が見えたら、セールスパーソンの増員を検討するなどの手段をとることができます。

予算設定と予算達成がやりやすくなる

予算作成にあたっては、前年度の実績と市場要因などをベースに販売見込みをたてたり、トップダウンで設定される最終の売上高目標値をベースにするのが普通です。また予算をどのように達成するかも、現実性を考慮せずに設定されがちです。しかしKPIが設定されていると、現実的かつ論理的な予算をくむことができ、どの指標をどう上げれば予算達成につながるかが具体手的にみえてきます。

セールスパーソンのモチベーション向上とコミュニケーションの活発化

具体的な数字による活動指標が提示されることで、セールスパーソンのモチベーションがあがります。また営業活動がチームやグループで行われる場合は、個別のセールスパーソン別、グループ別のKPI目標値を設定することで、現状や目標が具体的に数字で可視化され、チーム内でのコミュニケーションも活発となることが期待されます。

まとめ

KPIとはなにか、またKPI設定の重要性をおわかり頂けたでしょうか。KPIは、セールスパーソンのパフォーマンスや有効性、効率性を測る指標です。営業プロセスにおける様々な要因をKPIを使って分析することで問題点が可視化され、セールスパーソンにとっても経営者にとっても非常に分かりやすく納得のできる対策をとることができます。KPIを管理するアプリやソフトも提供されていますので、そうしたツールも利用して問題点を発見及び改善し、会社の目標達成につなげましょう。

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