BtoBマーケティングを劇的に変える!?アカウントベースドマーケティング(ABM)導入メリットを解説

企業間のマーケティング手法としてマーケティングオートメーション(MA)やアカウントベースドマーケティング(ABM)という言葉をよく聞くと思います。今回はABMとMAの違いや、導入した場合のメリット、そしてABMが導入されることによって効果が見込める分野の具体的事例などを詳しく見ていきます。

MAとABMの違い

マーケティングオートメーション(MA)やアカウントベースドマーケティング(ABM)といったデジタルを活用したB2Bマーケティング手法が近年注目を集めています。両者の違いですが、まずマーケティングオートメーション(MA)の場合、不特定多数の様々な企業に対し顧客開拓や育成を行います。

一方アカウントベースドマーケティング(ABM)はターゲット企業を定義したうえで、特定企業1社1社と関係性を深めて受注を獲得していきます。前者が個人単位のアプローチを前提としているのに対してABMは「企業単位でのアプローチ」を行います。

もともとMAが先に広まりましたが、近年個人をリードとしてマーケティングアプローチを行っても成果があがらない場合があるということが分かってきました。そのため重要な企業アカウントに焦点を絞り、もっとも有望な見込み客を割り出してターゲットとし、アプローチをかけて成約率、受注率をあげていくという手法が注目されています。

ABMの導入ステップ

ABMの導入は

ターゲット企業の選定 → ターゲットの分析とアプローチ方法の検討 → ターゲットに適したコンテンツを用意 → チャネルの決定とキャンペーンの実施 → KPI測定で最適化を実施

といったフローで行っていきます。このフローのポイントを一つずつ解説していきます。

1.ターゲット企業の選定

MAなど従来のB2Bマーケティングではリーチ範囲が広いキャンペーンを行い、その中からリードを獲得していくという手法を取ります。ABMではその逆で、特定のターゲットを決めてその顧客(企業)に対してアプローチをとっていきます。そこで初めに行うことは自社のターゲット企業の選定です。

顧客選定の作業は営業とマーケティングが共同作業で行います。顧客リストデータベースを作成し、売り上げや業種といったポテンシャルごとに分け、リードスコアリングを使って各顧客のランク付けをします。自社にとってスコアの高い顧客が抽出できターゲットが定またら、組織的に働きかけていきます。

2.ターゲットの分析とアプローチ方法の検討

MAでは新規の顧客開拓やリード獲得がメインになりますので、最初のアプローチであっても対象となるペルソナの設定から始めていきます。一方ABMは対象企業とその企業におけるキーマンが既に存在します。特定のキーマンを見据えて商談につながるアプローチ方法を検討していくようにします。例えばそのキーマンに対してテレアポでコンタクトするのか、セミナーや展示会といった場を利用するのかなど接触方法を検討します。

そのためにはこの段階でターゲットとして選定した顧客の業務上での課題、組織内での意思決定の仕組み、さらに誰が決定権を持つキーマンであるかなどターゲットの情報収集と分析をしておく必要があります。

3.ターゲットに適したコンテンツを用意する

次にターゲットに適したコンテンツを用意します。コンテンツの種類にはダイレクトメール、自社サイトやLP、ダウンロードさせるeBookなどがあります。一般的に多くの見込み客が自分の業界や職務内容に特化した特別なコンテンツを高く評価します。

ABMの概念が汎用なアプローチではなく、特定のターゲットに絞ったパーソナルなものなので、ターゲットがより共感するようなコンテンツを用意する必要性があります。共通で使えるような商品資料や業務案内の他、同業者の事例やターゲット企業にとって有意義なソリューションを盛り込むと効果的です。

4.チャネルの決定とキャンペーンの実施

Web、Eメール、モバイル、紙媒体といったチャネルで顧客と繋がっていますが、ターゲットに応じて最適なチャネルを決定します。必要に応じてマルチチャネルの統合を実施します。ここまで準備ができたらターゲットに合わせて準備したキャンペーンを実施します。キャンペーンではチャネル間でも連動して一貫したメッセージが伝わるようにする必要があります。

5.KPI測定で最適化を実施

KPI測定とABM効果の可視化を行うことで、問題のフィードバックを行ったりキャンペーンを常に最適化したりできます。効果の測定については事章で詳しく解説していきます。

6.ゴール

1~5のステップがきちんと踏まれて効果がでれば受注率の向上、売り上げアップといた結果につながります。

ABMを効果的に実践する際の課題

この章ではアカウントベースドマーケティング(ABM)の実践において課題となる事項をまとめてみます。

データベースの整備

自社の顧客データベースにおいて、何件の顧客と何件の企業が存在するか整備されているでしょうか?

例えば上の図のように同じ企業でありながら、データベース上で「社名の揺らぎ」が発生している場合、収集されてしまうリード数は3件となってしまいます。企業アカウントに対して実施するABMではこのように不確かなリードだと効果が薄れてしまいます。例えば上のように佐藤さん、鈴木さん、田中さんが自社HPにアクセスしてくれて商材の説明PDFをダウンロードしてくれたとして、リードが不確かな場合はエンゲージメントに対するスコアが3つに分散されてしまいます。もし同じトヨタ自動車であるとデータの整備ができていたら、トヨタ自動車へのスコアとしてまとめてカウントされ、重要見込み企業としてフィルタリングにひっかかってきます。効果を発揮するためにはまずはきちんとデータベースの整備を行いましょう。

営業とマーケティングの組織的連携が不可欠

ABMを導入したけれど活用できていないという話もよく耳にします。そのような会社は営業とマーケティングの組織的連携ができていない、社内の体制が整っていないといった問題があります。まずは営業部⇔マーケティング部(経営企画部)の役割分担といった企業体制の改善が必須となります。

効果測定を適切に行う

ABMを機能させるにはKPIを決め効果を定期的に測定する必要があります。測定の指標としては獲得リード数、ターゲットによる自社サイトや広告閲覧数といったエンゲージメントを追っていきますが、ここで重要なのは各個人のエンゲージメントではなく「企業単位」での測定を行っていくことです。そのためにひとつ前で述べたようなデータベースの整備が大切になってきます。

またキャンペーンの初期、中期、後期といった時間経過に沿って効果を測定することも重要です。MAでは一般的にリードの獲得数がKPIとして使用されますが、ABMでは単純にリード数だけを測定しても意味がありません。リード数というのは初期段階の指標であり、中期、後期においてはリードの質、例えば商談につながった数や成約率を測定していきます。

導入により効果が見込める企業は?

ABMは全ての企業形態に適しているわけではないです。どのような企業がよりABM/MAを活用できるのかは次のようになります:

MAに適した企業

・顧客が中小企業中心

・様々な業種の新規顧客が多い

・特定の顧客に売り上げをしめられていない

・製品が高額ではない

ABMに適した企業

・顧客が大手企業中心

・売り上げの大半をしめる大口顧客がいる

・大口顧客の中に対象となるキーマンがいる

・顧客を似た特徴でグルーピングできる

・1社の中に複数のキーパーソンがいる

・商談単価が高額

このように効果の発揮できる形態としては、ターゲットがある程度の規模の企業であることが望ましいと言えます。メリットのある分野としては物流や情報システム、製造業といった業種があげられます。

導入事例

日本オラクル

ITproマーケティングが主催した「B2Bセールス&マーケティングSummit 2016 Autumn」で日本オラクルがABMの導入事例を紹介しました。この中で「B2Bマーケティング担当者の80%は、ABMが他の手法よりも高いROI(投資対効果)を実現すると実感している」といった米国ITSMAによる調査結果を紹介しています。そしてオラクル社自身の成果としても次のように述べています。

"オラクルではABMの活用によって、今後の案件につながるコンタクトの獲得が24%増加した。コンバージョン率は通常のMAの27%に対し、ABMでは約2倍となる約52%もの成果を上げた。"

引用:「ABMで顧客企業のライフサイクル全体を支援する」

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atclact/active/16/100300107/100300007/?ST=mkt-trend&P=3

効果を発揮するためには営業とマーケティング部門の連携や、適切なターゲットの設定などここでも解説したような課題やハードルがあることも語られていますが、正しく導入すれば非常に高いROI(投資対効果)をあげられるということが分かります。

その他のメリットについては、デジタルを活用した効率の良いマーケティング活動ができること、自社リソースの無駄の削減などが期待できます。

まとめ

今後はAIの発展やビッグデータの活用といったデジタル的なイノベーションをますますマーケティングに活用していける時代となっています。ABMはデジタル化の技術を有効に活用し、B2Bマーケティングを劇的に変える手法です。これまでは属人的なスキルに頼る営業や、従来のマーケティング手法に頼っていた企業もMAやABMといったシステム化された方法を取り入れていくことで、自動化、効率化はもとより成果を爆発的に伸ばしていける可能性がでてきました。

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