新規開拓営業は難しいという声をよく聞きます。特にこれまで新規顧客を獲得するための営業経験のない営業マンにとってはどのようにして顧客を見つけ出し、どうアプローチしたらいいのか分からない人も多くいます。新規顧客獲得には営業全般的に求められる能力や知識だけなく、新規開拓営業に特化したノウハウやプロセスが存在します。今回は法人営業における新規開拓において成果を最大化するためのプロセスや戦略、失敗しやすいポイントを見ていきたいと思います。
目次
既存顧客への営業と新規開拓の違い
既存顧客
・キーパーソンの情報がある
・ニーズが分かっている
・営業コストや費やす時間が抑えられる
新規顧客
・担当者や決裁権者が誰か分からない
・営業先の会社が必要とするニーズやメリットが明確になっていない
・成果をだすまである程度の予算や時間の投資が必要
新規顧客は仮説・検証の活動プロセスの延長線上にしか成果が発生しません。情報が何もないのでまずは情報を得て、与えるメリットの整理やアプローチ優先順位を決定していかなければいけません。そのため既存顧客を相手にした営業プロセスよりも労力や時間がかかります。
ターゲットリストの作成
それでは実際に営業プロセスを見ていきます。新規顧客を開拓するための基本的な営業プロセスは一般的に次のようになります。
最初のプロセスであるターゲティングですが、データベースリストの入手とターゲットの絞り込みを行います。
リストの入手
新規の見込み客のリストを入手するには、展示会への出展で顧客データを収取する、リスティング広告を出稿して見込み客の問い合わせを獲得する、セミナーを開催するといった方法があります。
また上記のように時間や労力がかかる方法以外に手っ取り早くターゲットリストを得るには、「東京商工リサーチ[TSR]」(http://www.tsr-net.co.jp/)や「ネット・トレイン・サービス」(https://www.nt-service.jp/)といった、企業のデータベースリストを取り揃えている会社から必要情報を購入します。こうしたサービスを利用すれば業種や企業規模ごとに仕分けされたリストを手軽に入手できます。
ターゲットの絞り込み
リストを入手したら優先順位付けを行いターゲットの絞り込みを行います。業種や同質のニーズを持つグループによってカテゴリ(セグメント)化して、ランク分けしていきます。その中から自社の商品やサービスを訴求しやすいセグメントを選び出し優先順位をつけていきます。
画像引用:http://www.ibs.inte.co.jp/salesmarketing/wp-content/uploads/gazou_1.jpg
セグメント化する際には企業特性、企業の規模などのポテンシャル、ニーズ特性といった複数の切り口で分類するようにします。そうすることによってターゲティングの際の精度がより高まります。最終的にターゲットを決める時は次の点をポイントにします。
1.自社の商品やサービスがターゲットのニーズとマッチするか
2.十分な売上と利益をターゲットから確保することができるか
情報分析とデータベースの整備
ターゲットのリストができたら、「ターゲット像」を明確にしていきます。新規顧客開拓に取り掛かるには最初に述べたように情報がない状態からのスタートですので、アプローチをかける前にターゲットの市場分析、競争状況分析も含めた情報の整備は必須です。製品やソリューションからみて、どのような業種で、どのような規模で、担当する部門はどこなのか、職位はどれくらいかなど具体的なターゲット像を明確にしてデータベースを整備していきます。
ターゲット像を明確にするメリット
データベースが整理され、マーケティングに必要な項目が管理されていることで、ターゲットに合わせたマーケティング活動を行うことができます。整理すると次のようなメリットがあります。
・アプローチすべきキーマンを外さない
・ターゲットのニーズがピンポイントに分かる
・営業部門が効率的に活動できる(時間や人的リソースの無駄をなくせる)
ここまででリストの入手とセグメント化、ターゲットの絞りこみについて解説してきました。ターゲットリストを作るには知識やデータベースがないと苦戦してしまうことになります。
新規顧客獲得のプロセスのかなめは、いかに精度の高いデータベースの整備をするかにかかっています。未整備のリストを大量にどこからか買い取って、片はしから営業がアプローチをかけても営業効率が悪くなるだけで成果は見込めません。リストを入手してもそれを的確に絞り込み分析する力がなければ精度の高いターゲティングは行えません。
もしこれらの手法に未経験ならノウハウを持ったプロのコンサルティングに任せるのが一番効率が良いと言えます。企業データのプロファイリングやスコアリング、そして業種への正確な反映には高度な技術を要しますが、専門知識を持つコンサルが分析することで戦略的なマーケティングが可能になります。
アプローチの準備
ターゲティングが成功したらようやく実際に営業部門と連携して行動していくことになります。ターゲットとなる企業にアプローチをかけアポを取り付けます。しかしここでもなかなかうまく行かないことが多いのです。担当者とお話をして面談の機会を設けてもらうまでに連絡しても無視されたり、テレアポで即断られたりすることが日常茶飯事です。こうした企業は以下のポイントをもう一度見直してみてください。
商談までに必要なプロセスを理解しているか
新規開拓にはそれに応じたアプローチの方法があります。新規顧客開拓では顧客の営業マンへの信頼はとても大切です。長い時間をかけてお客様との距離を縮めて信頼関係を築いていくことが必要なのですがこのステップを行わず、いきなりアポを取り付けようとしたり、売り込みにかかったりしても逆効果です。潜在的な見込み客の見極め、適切なアプローチの方法とタイミング、信頼関係の構築の仕方等々、細かい設計が必要になってきます。
PDCAサイクルは適切に実施されているか
アプローチにはテレアポ、飛び込み、メール、FAXなどの手段が使われますが、断られても数をこなせと発破をかけるだけの上司もいます。数を打てば当たるという方式では成果があがらないままなのは明白です。営業には明確な設計書が必要となり、有能な営業マンならそのプロセスを熟知しています。躓いたらPDCAサイクル( Plan→ Do→ Check→ Act)を繰り返しプロセスの見直しをします。アポイントメントにつまずいても、PDCAを徹底し「どこで」「何が」いけなかったか、きちんと評価して改善を計らなければいつまでも非効率な営業体制のままなのです。
このアポイント活動のPDCAや長期的なフォローアップといったアクションを、どのように進めれば効率よく確実に実現できるのかが重要なのですが、経験もノウハウもない企業だったらマネジメントの専門家に担当してもらう必要もでてきます。
最後に
日本企業のマーケティングは欧米企業と比べると遅れていると言われています。2014年に日本の市場にも主要なマーケティングオートメーション(MA)が参入し、ようやく世界に追いついてきました。MAはIT技術を利用し膨大なデータを整備し、マーケティング活動を自動化・効率化してくれるシステムです。しかし国内の企業ではそのMAも活用できている組織や人材は限られているのが現状です。データが膨大にあっても営業活動に生かせなければ意味がないのです。
そしてデータを活用して実際に営業のプロセスに進むにも一定の知識、経験、ノウハウがないと苦戦してしまいます。社内でマーケティングに精通する人間を一から育成するには多大な時間と費用を費やします。何より時間の無駄は商機の逸失に繋がります。商談の機会を損失しないためにも専門知識をもったコンサルに相談することも必要な選択肢です。