【ソリューション営業】 BtoBにおける顧客目線に合わせた課題解決型営業

10年ほど前から、「ソリューション営業」という言葉が一般的になりました。単に製品を販売する法人営業ではなく、「ソリューション(課題解決)を提供するBtoB営業」として、現在では広く用いられています。しかし、「従来型の営業」と「ソリューション営業」があまり区別されずに用いられていることも多くあります。この記事では、事例をもとにして「ソリューション営業とは何か」をご紹介します。

インターネット出現による提案の複雑化

ソリューション営業という言葉が広く利用されるようになったのは、Windows 95によりパソコンが急速に普及し、それと同時にインターネットが広まったことと無縁ではありません。IT業界でも、これまでは「完全に閉じた自社のシステム」だけを考えていれば良かったですが、社員のだれもがパソコンを利用するようになり、そしてインターネットなしでは仕事もできなくなったのです。

企業は、自社だけで完全にコントロールできない「インターネット」を前に、パソコンという武器を社員にどのように使わせて会社を成長させようか、またインターネットの危険とどう向き合えばよいか、といった多くの矛盾する課題に直面することになりました。

インターネットの影響から完全に逃れられている業界はありません。最初はIT業界がインターネットの荒波をかぶり、次には他の業界もインターネットの荒波をかぶることになりました。こうして、全ての業界の提案が高度化していくことになりました。

ソリューションを提案する意味

法人営業で、顧客から求められているのは、「自社の製品」「性能」「競合製品との機能比較」「価格」だけではなくなりました。顧客が欲しいのは、「課題をどうすれば解決できるのか」という話であって、「何の製品を買う、買わない」という話ではありません。そして、時には顧客自身が課題について深く理解できていないこともあります。

ソリューション営業が行うべきことは、まずは顧客の漠然とした課題を言語化し、その言語化した課題を抽象的なものから具体的なものに変えていくことです。具体化する課題については、単純な1つの課題ではなく、相互に連携し、時には矛盾する課題に対する提案を出す必要があります。

こうした提案を行うに当たって、単に自社製品の理解があれば良いわけではありません。競合を含めた業界のトレンド、法規制、海外の動向、自社でできることと外注すべきこと、顧客の予算感などを踏まえなければなりません。例えば、当座の課題は解決されるが、中長期的なトレンドとは外れてしまっている解決方法であれば、結果として顧客は将来別な形で苦労することになってしまいます。よって、多数の観点から検討した提案を出し、その提案により課題が解決され、顧客の負担も少ない方法を考え出す必要があります。

もし、「自社の商品が顧客の課題に最適でない」ことが判明したら、ソリューション営業としては「無理に売らない」ことも重要です。また、「全て自社製品で完結させる」のではなく、「顧客の課題を解決するには、自社の製品も他社の製品も両方使うことが必要」と判断し提案することも必要になります。

ソリューション営業は高度な能力が必要となります。よって、一般的には研修などで育成しつつ経験を積ませるというやり方を用いています。営業関連ツール・システムの高度化により、より短時間で高度な提案を行えるようになってきているため、提案の水準はより高度になってきています。

ソリューション営業の事例

次に、具体的にはどのようなソリューション営業の事例があるか、ご紹介していきたいと思います。

富士ゼロックス株式会社のソリューション営業強化事例

http://www.e-sanro.net/jinji/j_jirei/sales/e1503-1/

キヤノン、リコーと並ぶ複合機大手の富士ゼロックスは、複合機を法人向けにリースし、メンテナンスを一括で提供することで事業を拡大させてきました。複合機の新規顧客向け営業は、大手3社間では製品力、故障時の対応では差が付きにくいため、「他社と比べての価格の安さ」が重要とされてきました。また、一度契約するとトラブル発生時以外は特に顧客対応する必要がないため、追加で収入を増やすための努力をしてきませんでした。

これは、富士ゼロックスだけでなく、複合機を販売する会社全ての課題です。複合機は「会社の縁の下の力持ち」であり、「問題なく動いて当たり前、トラブルがあると怒られる」タイプの製品です。そして、「問題なく動いているときに、複合機会社の営業から話を聞いている暇はない」という既存顧客がほとんどだからです。

そこで富士ゼロックスは、研修会社の支援を受けて、営業担当者を教育するプログラムを導入しました。ソリューション営業の7つのプロセスとして「事前準備」「興味喚起」「ニーズの共有」「提案」「受注」「設置検収」「フォロー」の7ステップに分けて、それぞれで必要なアクションを習得させるようにしています。

また、「A program」という富士ゼロックスのオフィス最適化提案について深く学ぶ手法も研修に取り入れています。単に複合機をリース販売する「製品営業」ではなく、オフィスの事務機器の予算の効率化、作業の効率化につながる「ソリューション提案」をするためのものです。「製品営業」だと、どうしても自社の製品の機能と他社製品との比較、またコスト比較といった狭い提案となってしまうため、「オフィス全体の最適化」という幅広い視点で営業範囲をとらえなおして、営業力強化を行っているのです。

NTTコミュニケーションズのソリューション営業強化事例

https://www.salesforce.com/jp/customers/stories/nttcom.jsp

NTTグループの中で、個人向けビジネスと法人向けビジネスの両方を持ちながらも、特に法人向けの提案力に強みを持つのがNTTコミュニケーションズです。従来型の電話やネットワーク回線だけでなく、IoT(様々なものがインターネット接続しデータをやり取りする技術)、ソフトウェア、クラウド、モバイルなど、提案する商品は複雑化しています。それだけでなく、顧客がグローバル化するにともない、「日本企業の海外現地法人」「海外企業の日本法人」など、世界中で均一の情報共有、提案レベルが求められるようになりました。

NTTコミュニケーションズは、SFA (Sales Force Automation: 営業活動自動化)ツールを用い、全世界での営業間で一元的な情報共有を行うようにしています。また、ソリューション営業を行うに当たり重要な、顧客の分析についても、ツールの機能を利用して、多角的で高度な分析を短時間で行い、提案の品質を上げるための取り組みを行っています。

ソリューション営業で顧客満足と提案力強化を実現

ソリューション営業は、単に製品を販売する存在ではなく、顧客の課題をより具体的に理解し、解決する存在です。よって、単に製品の知識を覚えれば、ソリューション営業に慣れるわけではありません。自社でのトレーニングや研修とともに、ソリューション営業育成の専門会社のトレーニングや研修を使って育成する必要があります。また、ソリューション営業の提案力を高めるためのシステムの整備による情報共有、分析ツールも重要となります。

ソリューション営業の育成やツールに関して、課題をお持ちの場合は、それぞれの課題に対応する専門の会社に問い合わせてみてください。専門会社の支援を受けることで、ソリューション営業の育成ペースを早めることができ、より質の高い提案をためのシステム・ツール群を整備することができます。

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